2014/04/22

書評

最近、クジラやイルカなどでいろいろ話題になっている漁業だけど、
もともと興味があった日本と世界の水産業について勉強したくなって、
アマゾンと古書店で、数冊一気に買い込んだ。
この問題について、いろいろな本が出ていることを改めて知りました。

その本について、簡単な書評を何度かに分けて書いておこうと思います。
ただ単にお魚が好きな人、最近美味しい魚が食べれないと思っている人、マグロが食べれなくなったら悲しいと思っている人、どうぞ日本の水産業についてちょっと関心を持って下さい。
とにかく、大変な状況のようです。

①「魚はどこに消えた?」
著者の片野歩氏は、マルハニチロの現役水産マン。
問題意識は「崖っぷち、日本の水産業」というサブタイトルに表されている。
日本の漁業は「衰退の一途をたどっており」、日本は世界に比べて完全な「負け組」で、
その再生にはよほど抜本的なことをやらないと難しい、という危機感にあふれている。
著者は日本漁業の衰退の立ち後れが「世界の常識、日本の非常識」にあると考える。
その最大の非常識は、著者によれば、日本の漁業そのものに関わる問題なのだが、
日本が世界の潮流に比して資源管理政策を十分に行っておらず、
世界的にすでに古い方法になってしまっている「オリンピック方式」を採用しているのため、
結果として乱獲・混獲が横行することで自らの首を締め続けていると指摘しています。
いまや国ごとに経済水域が決められており、過去のように自由に遠洋に出かけていって魚を捕ってくる時代ではないのだから、漁船や漁師によって捕れる量をあらかじめ定めておく「個別割当制度」を決めておくべきだと主張しています。
日本はかって世界最大の水産国でしたが、ノルウェーなどの国々にどんどん漁獲高でも輸出でも追い抜かれており、水産後進国になってしまっている、という指摘です。
この本は、そうした現実を、具体的なデータと証言、水産会社で働く人らしく、実感のこもった実例にによって紹介している。

日本の漁業は国際的潮流に立ち後れている
→このままでは復活の兆しはないない
→割当制度や養殖の強化に早急に取り組むべきである、という論理で、
日本漁業への問題提起として非常に良い意味で分かりやすすぎるほど分かりやすい。
大変説得力があるように読めるが、しかし、これとは相容れない考え方も世の中にはある。次回は、そうした「日本漁業ダメ論」への反論となる本を紹介したい。

© 2024 Nojima Tsuyoshi