「現代台湾政治を読み解く」という本が研文出版からこのほど出版され、手元に届いた。
手に取ってみると、内容があまりに濃いので、実際は読み解くというよりも、一文一文味読してゆっくりと堪能させてもらっているというのが本当のところで、まだまだその内容を読み解くところまでは至っていない。

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登場している筆者の方々は、編者の若林先生をはじめ、現代台湾政治研究の最前線にいる人たち。
ほとんどオールスターのような顔ぶれで、目次だけはこんな感じだ。

台湾歴史から読み解く―序に代えて(若林正丈)
台湾の選挙を地方から読み解く―雲林県の事例(小笠原欣幸)
政党システムの変動から読み解く(岸川毅)
政党組織研究から読み解く(松本充豊)
日台関係史研究から読み解く(清水麗)
戦後米台関係史研究から読み解く(前田直樹)
中台関係の国際政治学から読み解く(松田康博)

早稲田大学台湾研究所で2011年から2012年にかけて開催された連続ワークショップで行われた報告と討論の内容をまとめたもので、報告内容もさることながら、質問の鋭さも十分に読みものとして耐えるものになっている。
通常、この種の本はえていて内容に統一性が欠けたものになりがちだが、
この本はあらかじめのワークショックの人選と内容の分担がよほどうまかったのだろう、
台湾政治、台湾の選挙、外交、両岸などのバランスがよくとれている。

先日の台湾の学生運動が、中台関係に与えた衝撃は大きかった。
馬英九政権下で進んだ中台関係の雪解け基調は調整を余儀なくされるだろう。
また、陳水扁政権終盤から強まった国民党優勢の台湾政治情勢も、
今後、新しい局面、つまり国・民接戦状態に入っていく可能性が高い。
そうした新情勢を読み解くうえでも、この各論文のなかで提起されている論点が参考になる。
今年末に予定される地方選挙を皮切りに、来年の立法院選挙、再来年の総統選と続くこれからの台湾の選挙シーズンのなかで、机のうえに常備しておきたい一冊である。

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