台湾に行ったら、台湾映画「セディクバレ」の記者向け上映会がちょうど開かれるというので、
知人に頼み込み、会場に潜り込むことができました。
これがそのときにもらった入場券。

$私は書きたい

日本の台湾統治時代に起きた先住民族による反乱事件「霧社事件」を題材に、先住民族の怒り、葛藤、日本人の統治の問題点などを描き出すもので、いろいろな意味で、本当に注目されてきた作品ですが、感想から言うと「これは大ヒットにはならないのではないか」というものです。

確かにいい映画です。日本人の専門家も係わったというセットの凝りようはすごいし、音楽もいいし、ビビアン・スーを含め、先住民族出身者の俳優を中心に起用された登場人物たちの熱意、存在感もびりびりと伝わってきました。

しかし、問題点も多いです。まず長い。第一部第二部の2本あわせて5時間近くあります。ここまで長い作品に編集しなくても良かったと思いました。第一部は緊張感もあり、話の密度も高く、良かったのですが、第二部はほとんど日本兵と先住民族との戦闘シーンが延々と続き、かなり飽きてしまいます。

あと、戦闘シーンが首が刈られたり、血しぶきが飛んだりするせい惨なものが多く、「ありのままを描きたかった」という魏監督の意向だったのでしょうが、ここまで見せる必要があったのかどうか。
台湾社会は親が子供を連れて映画に行くことが多いのですが、私が親ならば15歳以下の子供には絶対に見せません。その点、魏監督の前作「海角七号」が、台湾では家族一緒に見に行くことで大ブームになったことと比べると、今回の「セディク・バレ」の動員力には限界があると思います。

7億台湾ドル(約20億円)という制作費は、ハリウッドでは普通でも、台湾では史上最大レベル。
魏監督は、「海角七号」で稼いだ資金をすべてつぎ込んで、この映画を撮ったといいます。その意気込みは素晴らしいのですが、芸術映画というジャンルならともかく、娯楽映画というくくりのなかで、この映画が、制作費を回収できるほどヒットするかどうか。

ただ、試写会を見た後、こうした疑問を台湾のメディアや映画関係者にぶつけましたが、
みんなの反応は「そんなことはないのではないか」というネガティブなものでした。
いま、台湾では「セディク・バレ」をみんなで見ようという運動が起きていて、
馬英九総統も自ら総統府の前に試写会場をセットさせて見に行くなど、
台湾という国をあげてこの映画を成功させようというムードにあふれていて、
いまのところこの映画への悪口や否定的な評論はちょっと出にくい雰囲気です。

ヴェネチア映画祭ではコンペ部門に出品していましたが、受賞はなしでした。第一部は9日からすでにロードショーが始まり、第二部も間をおかず30日から始まります。どこまで観客が足を運んでくれるか、とても楽しみに注目しています。

© 2021 Nojima Tsuyoshi