2012/05/27
日本台湾学会という学会で年に一度の学術大会が昨日、一橋大学であった。
台湾を研究する大学の先生や教員方はだいたい加わっていて、私も3年前から会員になった。
いろいろ学会はたくさんあるけど、台湾学会は新しい学会ということと、
台湾がいろいろな角度からまだ研究去れ尽くされていないこともあって、
会員の研究者の活動も活発だとされているらしい。
若手・中堅の20人ぐらいの人たちが、自分が研究している内容をペーパーにまとめて発表し、
コメンテーターや聴衆から批評や質問を受けるもので、毎回なかなか面白い。
こんなことまで掘り下げているんだと感心させられることも多く、毎年楽しみにしている。
午前と午後の部があって、午前は筑波大の楊子震さんが戦後日台貿易の展開について、
法政大学の竹茂敦さんがサンフランシスコ講和条約参加から日華平和条約締結まで、蔣介石政権(国府)の方針転換について語った。
楊さんは戦後の台湾人の中に「越境者」と呼ばれる存在の人々がいて、台湾や日本、中国の間をまたにかけて活躍して政策決定にも影響力を与えているという視点が面白かった。
竹茂さんはほんとうに丁寧に外交文書を追っかけていてあたまが下がる。
それでも、コメンテーターと聴衆からは容赦ない突っ込みが入り、
私も楊さんに「主人公となる越境者たちの個性や人生がもっとクリア浮かび上がらせるべきではないか」とコメントを差し上げた。
午後は「馬英九政権の4年間を検証する」というとっても興味深いタイトルで、
企画責任者は、東京外大の小笠原欣幸先生、座長は早稲田の若林正丈先生、コメンテーターは東大の松田康博さんという、台湾研究では本当におなじみのトリオで、聴衆も多かった。
報告者はみずほ総研の伊藤信悟さんが、台湾の対中経済交流について、
天理大学の松本充豊さんが台湾の「半大統領制」とという政治システムについて、
それぞれ報告を行った。
二人とも基本的に能力の高さに定評がある研究者だけあって、内容は本当に勉強になるものだった。ちょうど私が台湾にいたときのことなので、ああなるほど、そういう意味だったのか、そういう風に位置づけられるのかと、いちいちメモの手が止まらなかった。
中国と台湾との経済交流が「非対称な相互依存」となっているという伊藤さんの指摘。松田さんからは「非対称では相互依存ということはあり得ない」という鋭い突っ込みがあり、
党主席を兼務しなかった馬英九はそのために立法委員対策で政権運営に困難が生じた、という松本さんの問題提起には、松田さんは「そもそも台湾の立法委員が与党でも総統の言うことを聞かないのは昔から変わっていない」という、ちょっと笑えるコメントがついた。
去年は自分でも発表者の一人になって、故宮問題について発表したのだが、
今回は聞き手として学会を十分に楽しんだ。
学会って退屈そうなイメージかもしれないが、出入り自由でいろいろ聞けるし、
なかなか楽しい場である。来年はまたがんばってみて何か報告してみようかなと思います。