2013/01/08

中国

先週から今週にかけて、中国で官報系メディア、いわゆる「党の舌」の役割を担っている人民日報などが相次いでネット言論の規制強化をにおわせる論評を載せた。新しい法体系の必要性を唱え、事実に基づいた言論が大切だという論議を呼びかけている。しかし、その裏には、中国で習近平体制の発足後、「網絡反腐」(ネットを通じた反腐敗運動)が広がっていることから、その動きを押さえ込もうという思惑があると見られている。

 重慶市の地方幹部の破廉恥な行為が、中国版ツイッター「微博」を通じて11月にネットに流出し、ネット住民たちから「網絡反腐」の成功例としてがぜん注目を集め、その後もネット上にさまざまな事例が「告発」されていった。

 これに対し、今月23日の共産党機関誌人民日報は「限界線があってこそ、健全になれる」との記事を掲載。さらに相次いで、「ウエブは治外法権の地ではない」「インターネット:法律による管理が各国の常識だ」という記事を掲載した。

 また、党中央宣伝部直轄の光明日報も「情報を安全に保護する大きな傘を持つのは誰か」「ウエブの世界に法治の限界線を設けよ」などの文章を載せている。そこにはこう書かれている。

「社会生活にも境界があり、ウエブにも限界線がある。仮想空間のインターネットでも公序良俗の規制を逸脱はできない。複雑な理屈ではない

 「ウエブは本来人類生活と生産の道具であり、ウエブの活動は社会生活の投影だ。自由だけあればいい、束縛はいらないという王国にはなり得ないし、なるべきではない」

 要するにこれからはいい加減な指摘は厳しく取り締まりますよ、ということをユーザーに「天の声」として警告しているのである。

 確かに、「網絡反腐」の中には誇張や事実誤認も少なからず含まれていた。ただ、こうした官報系メディアの一連の報道の結果、中国のウエブ上では、これら各紙の論評が「網絡反腐」に対する規制のスタートだと受け止める悲観論が広がっている。

 中国では2000年にインターネット服務管理弁法を制定したが、その後のネット環境は微博(ウェイボー)の登場などもあって時代遅れになっており、2013年に改正法が提出されるのは確実だ。

 これまで、同法は基本的にインターネット事業従事者への管理に主眼が置かれていたが、改正法では、個人情報保護の強化などに加えて、現在は匿名が主流である「微博」やフォーラムなどでの実名制を含めて、発信する側の責任をより追及するような内容が含まれると見られている。こうした方向で改正法が実現した場合、法的な罰則があるというリスクをおかしてまで「網絡反腐」で権力に挑戦する人はいなくなるだろう。

*国際情報ウエブ「フォーサイト」に執筆したものを転載しました

© 2021 Nojima Tsuyoshi