台湾でこの一週間続いている馬英九総統と、王金平立法院長の「9月政争」で、
党籍剥奪を宣告されてもはや運命が風前の灯に思われた王金平だが、
なんと、党員資格の保全を申し立てた仮処分審査で、台北地裁は昨日、王金平の訴えをほぼ全面的に認め、党籍剥奪の是非を問う本裁判の確定までは、王金平が国民党員の地位を保てるよう命じた。
今後国民党は不服を申し立てるが、当分は王金平は立法院長のままでいる。
本裁判にもつれこめば確定までは一二年はかかるため、その間、王金平は、立法委員のままであり、当然、立法院長のままいることができることになり、「口利き」をめぐる馬英九の一連の攻撃がほとんど無意味になってしまうので、台湾の新聞は「大逆転」「王の逆襲」と大騒ぎになっている。

これは、確かにとても深刻な事態を引き起こすことになり、
昨日までは勝者のつもりでいた馬英九陣営は突然、窮地に追い込まれた形だ。
なぜかといえば、台湾の国会=立法院は17日から再開することになっているが、
そこで、王金平攻撃の先頭に立っていた江・行政院長らは、いまや与野党団結して王金平の応援団になっている国民党と民進党の立法委員たちの反撃の矢面に立たされ、本来今回の政変の目的だった原発の住民投票や中国との貿易サービス協定、シンガポールとのFTAなどの法案をスムーズに通すことが不可能になるからだ。
それだけではなく、王金平と民進党幹部の盗聴を公表した検察への報復も絶対に始まる。
9月29日には国民党大会が開かれるが、こちらも大荒れになることは確実。
さらに10月10日の双十節では、通例、総統と立法院長が並んで出席するのだが、「王金平はすでに立法院長として不適格だ」と会見で断罪している馬英九はいったいどうするのだろうか。

今回の台北地裁の女性裁判官は「平常心にのっとって審査した結果であり、法律は人間性から逸脱すべきではなく、関係者は理性を取り戻してほしい」と、間接的に馬英九の強引な手法を批判しているが、そもそも選挙によって選ばれた立法委員の長である立法院長を、
罪名も確定していない「口利き」の道義的な問題だけで、党籍剥奪→議員資格喪失→立法院長の資格も喪失という荒技で、王金平の追放を果たそうという作戦には、かなりの無理があったため、
その問題点を、しっかりと地裁の一裁判官に突かれてしまった形だ。
台湾の馬・王の政争は来週以降も続くことになり、まさに台湾政治は一瞬先は闇の世界である。

© 2021 Nojima Tsuyoshi