2013/10/08
この台湾映画シリーズもこれで20回。よく書いてきたものだと自分に少し感心する。
新しい目標を30回にして、もうちょっと頑張ります。
なにしろ台湾映画の復活ぶりがやっと日本でも本格的に認知されだして、
今度の東京国際映画祭でも台湾特集が組まれるし、
台湾映画の良さがしだいに広がっている感じがしている。
さて、この「抜一条河」、ちょうどいま台湾でロングラン上映をやっていて、
先々週に行ったときに見てきました。
いわゆる「88水害」に見舞われた南部・高雄県の甲仙地区の子供たちや外国人妻たちを題材に、
長期間にわたってフィルムを回し続けたドキュメンタリーである。
とにかく、88水害に何らかの思い出やかかわりがある人は必見の映画だと思う。
正直、あまり期待していなかったが、完全に裏切られたと感じるほど面白かった。
もう映画を見始めた5分から、涙が止まらなくなった。
それには、私の個人的な体験が関係していて、88水害のときにこの甲仙に何度も行って、
水害のひどさを目撃していたので、そのときの情景が蘇ってきて涙腺が開いてしまうのである。
村全部が土石流に飲まれて跡形もなくなってしまった小林村の葬儀の取材は、
台湾取材のなかでも最も忘れられない取材の一つである。
メディアの取材は、せいぜい被災直後から数週間で終わってしまうが、
この作品はそれから人々がどのように苦しみ、立ち直ったかを追い続けてくれている。
甲仙の子供たちは、綱引きに希望を見いだし、全国大会の優勝を目指して努力する。
中国語で綱引きは「抜河」と呼ぶ。そして、甲仙の町を破壊したのも河だった。
だから、この映画のタイトルは綱引きに勝てという意味と、
災害を乗り越えろという両方の意味を持っているのである。
物語は、二つの話が絡み合いながら進んでいく。
このタイトルにある綱引きの話はもちろん中心とされているのだが、
それだけとどうしても深みがない感動物語で終わってしまうところを、
台湾の山間部にたくさんいる外国人花嫁たちの話を取り込んでいるところがすばらしい。
台湾は、日本よりも外国人労働力の受け入れが進んだところであると同時に、
外国人花嫁についても、日本以上に大々的に農村男子を中心にめとられている。
甲仙にも、フィリピン、ベトナム、カンボジア、インドネシアなどから、たくさんの女性が嫁いできていた。
その花嫁たちが、地域と一緒に、むしろ地域の励ましとなって、
甲仙を盛り上げていくところは、ドキュメンタリーとは思えない「いい話」なのである。
外国人との接し方、受け入れ方については、台湾ははるかに日本より進んでいる。
もちろんいろいろな問題があるのだろうが、それは絶対に100%言えることだと思う。