2014/03/28
上海の復旦大学での講演の黒板
中国で拙著「ふたつの故宮博物院」の簡体字版が1月に出版されたので、
出版してくれた上海訳文出版社の招待で、6日間にわたり、北京と上海で宣伝活動をしてきた。
中央ラジオ、アマゾン、lens、南方周末、名牌、華夏時報、中国青年報、周末画報、北京晨報、東方早報、新聞晨報、生活週刊、申江服務導報、新民晩報、南方人物周刊、外滩画報などのメディアに取材をされた。
聞かれた質問はだいたい「どうして日本人が故宮のことを書いたのか?」「故宮のどこに引かれた?」「北京と台北、どっちの故宮が優れていると思うか?」「日本人は中国文化をどう考えているのか」というところあたりで、取材を繰り返しているうちにテープレコーダーのような気分になる。
それにしても思うのは、取材をされるのは、取材をするよりも、かなり大変だということ。政治家や芸能人の人たちの苦労がちょっとだけ分かった。どの記者さんにもほかのメディアと違った、できるだけ新しいものが面白いものを込めてあげようと思うのだけれど、なかなかそうもいかない。それに、日中関係は敏感なので、なかなか言いにくいこともある。
メディアとの一対一の取材はまだよくて、「これはオフレコで」とか「いまのはなし」とか言えるけれども、北京大学、書店、上海図書館、復旦大学などで講演をしたときは、聴衆からこうした政治的なところに質問が飛ぶと、ちょっと緊張した。しかし、「今回の講演は本のことなので」と回答を避けるようなことをすると失礼でもあるので、できるだけ分かりやすく日本の考えを客観的に説明するように心がけた。
中国では最初に一万部を印刷し、いま二万部まで増刷し、出版社では五万部を目標にしているとか。本が売れるのは嬉しいが、一方で、こうした機会に中国のメディア界や出版界の現状をいろいろ記者や出版社の人たちから聞けるのはなにより楽しく、取材の最後の五分は逆取材させてもらった。本を出すことのメリットは、台湾でもそうだったが、取材ではなかなか知り合えない人たちとかんたんに知り合いになって、人脈が大きく広がることだというのが実感だ。
いまアマゾンが中国でも圧倒的に広がっていて、講演会に本を持って来てくれた人たちの大半が、ネットで本を買ったと言っていた。もともと数社あったネット書店は、いまアマゾンなど三強に絞られているようだが、アマゾンがだんだんとほかを圧倒しつつあるとか。日本と同じだ。北京にあるアマゾンのオフィスはまるでシリコンバレーの企業のようで、多くの外国人や日本人も働いていた。