台湾で続く反・中台サービス貿易協定をめぐる学生の抗議活動のなかで、
台湾で最も有名なカリスマ作家で、馬英九政権の文化部長である龍応台と、抗議学生指導者でいま台湾のカリスマとなっている林飛帆の「口論」がなかなか面白かった。

龍応台は2日の立法院で答弁に立ち、こんなことを話した。
「学生たちの組織的な分業、国際的なアピールなどについては100点をあげたい。こうした若者たちのことは本当にいとおしい。できれば文化部で仕事をして欲しいぐらいいだ。しかし、彼らにも欠点はある。それは思想が薄弱なことだ。主張や行動に矛盾が大きい。法治は民主を支える。しかし学生たちの行動はその点で正義に反している。協定のどこに反対しているのか。学生たちは議場を明け渡し、早く立法院に仕事をさせるべきだ」
龍応台発言内容の報道(中国語)

龍応台らしいものの言い方だ。彼女はいつも文化人の発言と、政治家の発言をうまく使い分けている。前段は文化人としての彼女だが、後段でしっかり閣僚の一員としての立場に立ち戻っている。

これに対して、林飛帆は昨日のうちにすぐに反論した。
「龍応台にはこういう話を語る資格はない。彼女がかって野百合学生運動のときに語った話とは完全に食い違っている。権力者になったあと、過去の主張と価値の異なることを語っている。思想薄弱なのはむしろ龍応台であり、学生ではない」
林飛帆発言内容の報道(中国語)

林飛帆は本当に頭がいいと思う。龍応台の最もつつかれたくない点をグサリと刺した。
戒厳令後で最初の学生運動として1990年、学生たちが繰り広げた「野百合学生運動」では、民主化を要求し、李登輝政権はこれをひとつのきっかけとして段階的な民主化に動いた。このとき、学生たちが愛読したのが龍応台の本であり、すでに作家として影響力を持っていた龍応台の学生への共感や民主化への支持は、学生たちにとって大きな支えだったからだ。

それから20年以上が過ぎて、台湾社会の局面は大きく変わった。この龍応台と林飛帆のやりとりは、1990年以降の台湾の歩みを瞬時に思いおこさせてくれた。

© 2021 Nojima Tsuyoshi