国民党が大敗を喫した昨日投開票された台湾の統一地方選について、初歩的な分析を書きました。後日、もっと精度と角度と深度のあるものをいくつかの媒体に出していくつもりですが、台湾政治にとっても重大な事態ということもあり、取り急ぎのものですが、一読いただければ幸いです。


 まさに「変天」(世の中がひっくり返る、という意味)という言葉がふさわしい。思えば、民進党が歴史的敗北を喫した2008年の立法院選挙から6年。あのときと同様、再び、台湾のメディアは、台湾政治におけるこの地殻変動を「変天」という言葉でしか言い表すしかなかった。
 29日に投票が行われた台湾の統一地方選で、国民党は、22市・県の首長ポストのうち13まで民進党(選挙前は6のみ)に奪われた。台北、新北、桃園、台中、台南、高雄の六大都市でみても、もともと国民党は4市のポストを有していたが、辛勝だった新北市以外では敗北を喫した。国民党が地盤である台北市を失ったのは1994年に陳水扁に敗れて以来の事態である。
 国民党の劣勢は事前の情勢判断から明らかではあったが、ここまで雪崩式に破れるとは、誰も予想していなかった。台北市や台中市については事前の世論調査で国民党不利ははっきりしていたが、不利と見られた桃園市や嘉義市などでも民進党候補が勝ち、国民党圧勝と見られた新北市でも大接戦になるとは誰も思っておらず、いろいろな意味で予想を超えた現象が起きた選挙だった。
 江宜樺行政院長(首相)が辞任を表明した。本来、行政の長である行政院長が、国民党の敗北の責任を取るのは論理的に不可思議なことではあるが、国民党主席を馬総統が兼務しており、総統の党主席兼務が規定にされているため、ほかに責任を取れる人がいなかったのである。
 敗北の理由については、現状で言えるポイントはいくつかある。
 一つは、馬総統の不人気が、すべての国民党に影響を及ぼした、ということだ。支持率の低迷は2009年の88水害以来、すでに4年間を超える。その間、支持率回復に有効な手を打てず、小さなスキャンダルや失政によって徐々に生命力を削り取られてきた。その最終的な有権者の「ダメだし」がこの選挙だった。台湾のメディアが言うように「投票で教訓を与えた」ということである。
 もう一つは、基本的には反馬勢力であるヒマワリ運動の「成功」によって、それまではいささかまとまりを欠いていた野党陣営が団結し、勢いを得たということだ。逆に言えば、サービス貿易協定の決定において学生たちの要求に屈したことが、今回の敗北の導火線になったということだろう。
 そして三つ目は、中国との関係において、一貫して「対中融和」と経済関係の強化を唱えてきた馬政権の路線に有権者が待ったをかけたとも言える。ヒマワリ運動の問題とも通じるが、対中関係の急速な進展は台湾に利益ももたらしたが、反作用として台湾が中国に飲み込まれるとの不安が広がったことが対中関係に慎重な民進党に票を集める結果となったと見られる。
 それでは、問題はこの統一地方選の結果が、これからの台湾政治にどのような影響を及ぼしていくのかという点だが、予定としては、おそらく2015年末には立法院選挙、2016年初頭には総統選挙という二つの大きな選挙を控えている。「行政中立」があまり意識されない台湾においては、市・県長のポストを握ることによって動員される行政リソースが国政選挙においても大きな得票の原動力になることはかねてから言われている。
 得票率についてみると、民進党陣営が47%の得票率で、国民党の40%を大幅に上回った。今後はこの数字を下地に台湾選挙の動向が占われていくわけで、国民党は政権喪失の危機を目前の現実として受け止めざるを得ない事態であり、逆に言うと、民進党は政権復帰が現実味を帯びてきたと言える。
 今回の選挙の結果を受けて、今後予想される事態をいくつか順不同で並べてみる。

・ 党主席として選挙に敗北を喫した馬総統は、後継指名を含めて、馬英九後に向けた発言権を大いに弱めた。支持率回復は絶望的で、今後対中関係を含めて重要政策の遂行は難しくなった。
・ 国民党は今後、この選挙でかろうじて生き残った朱立倫・新北市長と、いまのところ無傷で力を温存してきている呉敦義・副総統の二人を軸に進んでいく。下馬評に一部出ていた江行政院長は辞任でレースから外れた。党内選考がもつれる可能性もある気がする。
・ これまで改善局面にあった中台関係は今後調整期に入り、現状よりマイナスになることはないだろうが、当面進展も期待できない。逆に言えば、中国は台湾と距離をやや置く対応になるだろう。
・ 民進党の総統候補は今回の選挙で党主席として勝利を導いた蔡英文の確率が高まった。今後は総統選後の組閣も睨んだチーム蔡の選挙体制の構築が焦点になる。

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