2015/01/22

中華文明

なんか体調があまりまだ芳しくなくてなるべく出歩きたくないのだが、行けるうちに行っておかないといけなくなってしまうのが怖いと思って、表参道にある根津美術館の特別展「動物礼讃」を見に行って来た。ほんと、見に行って良かった~~~と心底思った。すばらい企画だった。

根津美術館には、世界的に有名な青銅器コレクションがある。これは日本の住友グループが作り上げた「住友コレクション」と並んで、日本の二大青銅器コレクションといってもいい。特に、この二つのコレクションには、故宮にある毛公鼎のような大型のものではなく、かばんに入ってしまうような小型・中型の青銅器を中心にしている。これは、これらの青銅器の品々が日本に流れてきた清朝末期、民国初期にかけて船で簡単に運べるかどうかという点が大きく影響したと思える。

根津美術館の青銅器コレクションのなかで、最も有名なのは、二匹の羊が背中あわせにになって器が乗っているというユニークな造型である「双羊尊」である。文字通り、双子の羊が「尊」(お酒の器)を抱えるという図である。この作品は世界に二品しか類似品がないこともでも知られている。そして、もう一品は英国の大英博物館に収蔵されている。今回は、未年ということを狙ったに違いないのだが、大英博物館からもう一体の「双羊尊」をレンタルして、二つ並べて展示するという、恐らくもう二度とないのではないかと思える企画なのである。

二匹の羊をまじまじと比べてみたら、分かった点がいくつかある。
・同じ時期に同じ場所で製造されたと言われているが、それはほぼあり得ないこと。それは、細かい文様が造型の違いがあるので、双子ではなく、せいぜい親戚ぐらいである。
・おそらく大英博物館のほうが殷前期で、根津美術館のほうが殷後期ではないかと思われること。
・美術品としてのクオリティは根津美術館の方のものが勝っていること。

そんなことをあれこれ考えて20分ほど見続けていると、無表情に見える羊の顔がなんだか笑っているように見えてきた。これは、冗談ではなく、中国古代の青銅器を眺めていると、ときどき感じる錯覚である。青銅器を飾った動物たちは、いずれも基本は生け贄となって自らの体を祭礼儀式に使われる青銅器に形を変えたもので、そこの動物の霊性が宿り、「魔」を退けたりする意味を持っていると信じられている。基本は、動物たちは行きながら、器に封じ込まれたのである。そのものによって、動物が怒っていたり、笑っていたり、違いがあるのだが、無言の対話をしていると、その青銅器のなかから動物の魂が語りかけてくるような、不思議な感覚に包まれる。

今回の見どころは、この二つの「双羊尊」だけではない。泉屋博古館からもいろいろ絶品の動物を青銅器をかり出してきている。「虎食人卣」と呼ばれる品物も、これも世界に二品しかないと言われているものだ。ほかにも動物の意匠がいかに青銅器に使われているか大変勉強になる刺激的な展示物ばかりで、これは本当におすすめなので、2月22日までにお出かけして欲しい。

© 2019 Nojima Tsuyoshi