2015/11/03

台湾映画

予告編はここから

 東京国際映画祭に招かれて「百日草」の邦題で上映された「百日告別」を台湾の映画館で見た。台湾の映画館の回転はとても早い。人気がない作品はあっという間に消えていく。この映画も、10月10日ごろに上映されて、今週いっぱいだろう。それでも頑張った方だと言えるかも知れない。
 しかし、映画自体は、よく引き締まった、贅肉のない、プロフェッショナルな作品だった。東京映画祭には、決して傑作とは言いがたい王童監督「風中家族」が招かれており、映画祭の評価基準が理解できなかったのだが、この作品はいい意味で映画祭向きの作品であり、金馬奨にもいくつかの部門でノミネートされていることがうなづける。
 本作は、人は、親しい人間の死を、どうやって乗り越えるのか、という永遠のテーマを扱っている。その死が理不尽で、自己責任ではなく、そして、突然であるほど、そのプロセスは苦難に満ちたものになる。乗り越えられない人も多いだろう。その苦悩の日々を100日という時間の推移にあわせて描くものだ。
 映画は、多重交通事故の現場から始まる。複数の車が巻き込まれた。そのなかで、身重の妻を失った男と、結婚相手を失った女を、平行して描いていく。二人とも親愛な人の死を受け入れられず、心を閉ざし、周囲との衝突も起こしてしまう。男がピアノ教師だった妻の教え子たちに授業料を返してあき、女が結婚相手と一緒に行く予定だった沖縄に一人で足を運ぶところである。一見意味のないような儀式が、本人たちの喪失感ゆえに必要とされる気持ちが痛いほど伝わってくる。決して分かり易い救いは得られるものではないが、動き出すことによって、新しい一歩を踏み出せるきっかけになる。何かにぶち当たったときは少し時間を巻き戻してみることが大切だと教えられる。
 感情の描き方が細やかでいい。監督の林書宇自身の体験に根ざす脚本ということもあるだろう。林監督は2008年に名作「九降風」を発表して一躍注目を集め、2011年には「星空」という優れた作品も取っている。3~4年に一度、練り上げた作品を世に問うていく安定タイプの監督のようだ。いずれの作品にも、喪失と再生がテーマになっており、監督のこだわりが伝わってくる。今年の台湾映画も秀作が多い。ぜひ、日本でもしっかり上映してほしい一作である。

© 2021 Nojima Tsuyoshi