2016/05/05
駱文森さんが亡くなった。台北のご自宅でお焼香をさせていただいてきた。
基隆の出身で、首都早報や自由時報で記者として活躍し、朝日新聞台北支局の立ち上げに関わり、その後も支局の顧問として私も含めて歴代の特派員がみんなお世話になった。台湾の戦後の生き証人の一人でたくさんの知識と人脈を持っておられて、メディア人として時代を生き抜いてきた凄みもあった人だった。日本から行けない人も多いと思うので、ご遺族の了解を得て、ご遺影の写真を載せさせていただくことにした。私が特派員だったときはちょうど馬英九政権の全盛時で、台湾意識の強い持ち主だった駱さんはちょっと淋しそうにしていた。いつも支局で新聞や雑誌を読んでから、中山北路のプールに体を鍛えに出かけていく姿が思い浮かぶ。蔡英文政権の誕生を見ることなく逝ってしまわれたのが残念で仕方ない。でも、駱さんは、複数の研究者による台湾オーラルヒストリー研究会のインタビューでオーラルヒストリーを作っていて、ちょうど本(台湾口述歴史研究第16集)が完成したのが3月。そのころから急にご体調を崩された。生前に本が完成したのは本当に良かった。駱さんは病床でみんなに配ろうと本に書き込むサインを練習されていたそうで、2月に書いていたという練習のサインのコピーをご遺族が私あての本に貼付けてくださった。駱さんの遺言として大切に読みたい。お世話になりました。ご冥福をお祈りいたします。