台湾映画「太陽の子」(原題:太陽的孩子)の日本初上映を行います。6月24日(金)18時半、東京都港区虎ノ門の台湾文化センターです。「太陽の子」の日本上映プロジェクトの第一弾で、台湾文化センターのオープニング一周年イベントの一環でもあります。昨日より告知をスタートしました。詳細はこの上映会の共同主催者である台湾文化センターのHPならびに「台湾映画同好会」FBページをご参照ください。また、作品の中国語予告編はこちらからご覧になります。

この映画は、台湾の東海岸・花蓮の港口という美しいアミ族の集落が舞台です。ホテル開発にさらされた伝統の土地を守るべきか、開発を受け入れて経済発展を選ぶべきか。そこに生きる人々が迷い悩みながら、「海稲米」という伝統の稲作の復活を通して、ばらばらになりかけた「故郷」と「家族」の再生に取り組むというストーリーです。実話をもとに映画化され、2015年に台湾で上映されました。

わたしは、この映画を台湾の映画館で見ました。派手さはありませんが、演技と映像と音楽がバランスよくまとまり、笑いと涙を誘いながら、心に染み込むリアリティがある素晴らしい作品でした。社会と家族と伝統が断絶し、崩壊に向かう現実は、日本にとっても他人事ではありません。台湾という国際社会のマイノリティ的存在の内部におけるマイノリティである先住民が直面する問題も、この映画から浮かび上がります。とにかくいい作品なので、昨今台湾への関心が高まっている日本でなおさら多くの人に見てほしいと思いました。

ところが、台湾での上映から半年以上が過ぎても、日本では配給に手を挙げる会社は出てこないようでした。このままではこの作品が日本に来ないまま埋もれてしまうという危機感を抱き、まずは自分から動こうと決心しました。今年の3月末、わたしは台湾に共同監督の一人である鄭有傑監督を訪ね、日本での上映を行いたい旨を打診しました。日本語が達者である鄭監督もちょうど日本での上映を待ち望んでおり、また関係各方面のご厚意もあり、破格の条件で非営利の上映権を授権いただきました。舞台である花蓮の港口集落も訪れ、もう一人のアミ族の監督であるレカル・スミ氏にもお会いしました。

その後、日本に戻ってすぐに台湾映画同好会、翻訳者、デザイナーの方々に声をかけ、「太陽の子」上映プロジェクトの小さな私的チームを立ち上げました。日本語字幕の翻訳、チラシの作成、映画情報の日本語化、会場の確定などをおよそ1ヶ月半という短期間でほぼ整えられたのは、すべて、わたしの趣旨に賛同し、無償で動いて下さったチームの皆さんと、全面的に協力してくれた「太陽の子」製作関係者の皆さん、そして、開設一周年の記念行事の一つに快く加えてくださった台湾文化センターのお陰です。

現時点では6月24日の上映会が決まっているだけです。映画会社の人間でもないわたしは、この上映プロジェクトを半年ぐらいの短期勝負だと考え、3つの目標を立てました。①日本の何カ所かで(できれば東京以外でも)「太陽の子」を上映すること②日本の映画館で正式に上映が決まり、上映権をちゃんとした配給会社に引き継いでいただくこと③日本のどこかの映画祭に出品されること、です。①と②についてはぜひ実現したいです。③はわたしの能力を超えた世界なので、あくまでそうなればいいなと思っているものです。

この作品は、一度見ていただかないと、良さが伝わりづらい作品です。鄭監督も「見た人はみんな喜んでくれる。見てもらうまでが大変だったと」と話していました。わたしもまったく同感です。ですから、まずは見てもらい、口コミで良さを語ってもらいたい。交通費さえ出していただければ、時間の許す範囲で日本のどこへでも日本語字幕のついた映画のDVD(ブルーレイもあります)を片手に駆けつけ、必要ならばわたしの解説つきで、上映させていただきます。素材の流出を避けるため、素材のみの貸し出しは原則できません。

この映画は台湾で高く評価され、現在も海外での映画賞などに呼ばれて、受賞も増えています。アミ族のシンガー、スミンが歌う主題歌「不要放棄」は台湾のアカデミー賞・金馬奨で賞に選ばれ、このほど発表された台湾のレコード大賞・金曲奨でも最優秀歌曲賞にノミネートされました。3年後、5年後には、台湾映画史に名声が確立する作品だとわたしは思っています。もちろん、映画は人によって好き嫌いがあり、善し悪しにも絶対的な評価はありません。ですが、いまの台湾社会でアミ族ら先住民の社会に何が起きているのか、台湾における「多様性」とは何なのか、台湾とはいったいどんな土地であるのか、そんな問題に関心がある方は、よかったら、いちどぜひこの作品を見てください。きっと何かを、皆さんの心に深く刻んでくれるはずです。

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