2017/03/17

私的書評

 新幹線の長旅のお供はこの3冊。
 中国政府からも批判されて話題になった防衛研究所編「中国安全保障レポート2017」は、謹呈いただいたものだが、一見するとシンクタンクのお堅い報告書風なのだが、読んでみると、まったくそうではなく、新書を読むような面白さと示唆がある。中台関係の「現状維持」に対する問題提起がぐいぐい表に出ている。中台関係の「現状維持」について、著者の一人の門間理良さんによる「現状維持されているのは、あくまで中華人民共和国と中華民国という二つの体制が対峙するという枠組みだけで、それを取り巻く東アジアの国際関係や中国の国力、台湾の政治体制などはダイナミックに変化しており、その内実は大きく変容を遂げているのではないか」という指摘はまさに正論であり、台湾問題を論じるときの「現状維持」の安易な使われ方に警鐘を鳴らしている。
 「図解台湾棒球史」はいま野球を通して日台100年史を読み解く作業をしているので、そのお勉強に。台湾の棒球は、棒球であって、棒球に非ず、実は日式野球なり、というのが私の問題意識。
 李海著「日本亡命期の梁啓超」は、古書で2000円するのをちょっと迷いながら入手したものなのだが、買って良かったと納得できる著作。これを読むと、どのように近代の中国人が日本を功利主義的かつ選択的に理解しようとしたのかがわかる。それは、急激な近代化の役に立てるという強い理由があったからなのだが、梁啓超はその最先端にいた人物。その点を実証的に論考している作品。まだ半分しか読んでないけど、時間を忘れて引き込まれている。日中国交正常化後の中国人の日本理解も基本はこのラインに沿っていて、それが日中相互理解にどう作用してきたのかが興味深い。結構それが中国の対日観のウィークポイントだという気がしている。

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