2017/08/15

書評

 戦前の台湾で活躍した天才フィールドワーカー、鹿野忠雄の山岳文学の傑作「山と雲と蕃人と」を入手。なかなか高かったが、どうしても手元において、ゆっくり読みたかった。ペラペラめくるだけで、台湾の山々が脳裏に浮かぶような涼やかな筆致に引き込まれる。楊南郡氏の巻末の解説もものすごく読ませる。

 鹿野忠雄は、昆虫学者であり、人類学者であり、地理学者でもあり、探検家で、優れた書き手でもあった。素晴らしい業績を各方面で残しながら、35歳の若さで、1944年に北ボルネオで消息を絶ち、遺体もまだ見つかっていない。わずか10数年の稼働時間で、この人が残した圧倒的な仕事の質と量を見るとき、敬服の2文字しか思い浮かばない。台湾はあの時代の「異才」が羽ばたく場所だった。

© 2019 Nojima Tsuyoshi