2012/02/11

中国

権力闘争は、いくら当人たちが隠そうとしていても、見えてくる時がある。
それは戦っている双方が護るべき利益がそれぞれ食い違っているからだろう。

重慶がこの1週間ほど、面白いことになっている。
重慶を最近騒がせている王立軍事件は、今年秋の共産党大会による指導部交代を前に、
胡錦涛を軸とする共産党青年団グループと、次期トップの習近平に代表されるいわゆる太子党のグループの争いが関係していることは間違いない。
重慶市トップ(党委書記)の薄熙来は、ここ何年か、革命歌を歌う運動を展開する一方で、ヤクザ組織への攻撃を宣言する「唱紅打黒」の運動で話題をさらってきた。
その「打黒」で、薄熙来のかわりに先頭に立ってきたのが、王立軍副市長兼公安局長だった。

今回は、その王立軍は、まず最初に公安局長の職を解かれて、教育問題の専従にさせられ、
その後、成都の米国領事館に駆け込んで24時間ほど中にいて、
出てきた後は、「激務による体調不良によって任務を離れる」ということになった。
ここまでは、公式情報ですでに確認されている。

この先は、公式情報では確認されていないが、かなり蓋然性の高い情報がいくつかある。
まず、王立軍が公安局長の職務を解かれる前、党中央の規律委員会の調査を受けたこと。
ここで、自身の不正問題などについて証拠を突きつけられた可能性がある。
そこで、王立軍は、薄熙来のさまざまな不正を中央にバラす代わりに保身を図った。
この動きを察知した薄熙来は、王立軍を切ることを決意。
王立軍は生命の危険を感じ、変装して重慶から成都に潜行し、領事館に逃げ込んだ、とされている。

ここからは、基本的に推測の域を出ていない話になる。
薄熙来は父親が革命元老の薄一波で、立場的には太子党の一派で、団派には目の上のたんこぶである。
次期党指導部の政治局常務委員は9人で、うち6人ぐらいがほぼ確定している。
残りのイスを、青年団派と、太子党が争っている構図のなかで、
最近は薄熙来が、政治局入りがかなり濃厚になっていたとの情報もあった。
そのことに危機感を抱いた胡錦涛らは、王立軍の不正の証拠をつかんだことで薄熙来を揺さぶった。
そんなシナリオが思い浮かぶ。
そうなると、この事件は、現トップの胡錦涛と次期トップの習近平の代理戦争という匂いがする。
現在、王立軍は軟禁状態で党の調査を受けている一方、
薄熙来は重慶のメディアを使って連日どうでもいい自身の発言や訪問をメディアで大々的に報道させ、
健在をアピールしているが、逆に焦りの大きさも見えてくる。
今後の重慶からは目が離せなさそうだ。

© 2021 Nojima Tsuyoshi