2012/02/27

その他

米プロバスケNBAで彗星のように登場して大活躍している台湾系米国人のジェレミ ー・リンという選手が全米中の話題をさらっている。日本ではダルビッシュについて大騒ぎをしているが、いまの全米的な知名度や騒がれ方では、リン選手に遠く及ばないだろう。バスケにはあまり関心はないが、彼のバックグラウンドには大変興味がある。

 23歳のリンは、名前の通り、林という姓で、漢字のフルネームも持っていて、それは「林書豪」。
 NBAで初めての台湾系米国人二世の選手とされている。アジア系のバスケ選手は少なく、リンは大学などで大活躍してもドラフトにかからず、プロに入ってもなかなかスタメンのチャンスをつかめなかった。なぜ、これほどの選手が埋もれてきたのか、という疑問は、きっと「アジア人などバスケができるはずがない」という偏見があったからだろう。

 両親は台湾出身だ。しかし、生まれたのはロサンゼルスというから、もうすっかり米国人として育った若者である。結論から言えば、台湾人でも中国人でもなく、完全な米国人ということだ。
 ただ、台湾の新聞では連日、リンの活躍を大々的に取り上げ、「我が国の誇り」というように報道している。台湾にいる親族たちにも密着取材を仕掛けていて、リンが「プライバシーを守ってほしい」と呼びかけるほど。
 一方、中国でもリンは引退した姚明にかわってNBAに現れた「中国出身」のヒーローとして大きく報じられ、「台湾人」などという書き方はされていない。ただ、リンは熱心なクリスチャンなのだが、その点はあまり中国の新聞で書かれたりしない。

 要するに、両岸(中台)で、リンを取り合っているような構図になっているのである。
 これに対し、最近、台湾にいるリンの伯父(つまり父親の兄)は、ニューヨークタイムズの取材に対し、「彼らは台湾人だ。このことははっきりさせておきたい」と答えた。

 大叔父によると、リンの父母はどちらも台湾で生まれた。もともと林家は1707年に福建省から台湾に渡った移民で、すでにリンの父親で第八代になる正真正銘の本省人だ。

 ただ、リンの母方の祖母は、1949年の蒋介石の台湾撤退のとき、一緒に浙江省から渡ってきた外省人であり、中国側ではリンを中国出身だという根拠にもなっている。
 ただ、大叔父は「台湾は父系社会だ。だから林書豪(リン)は台湾人ということだ」と語った。

 このへんの両岸(中台)の温度差や認識のズレはなかなか興味深い。さらに、そこに台湾で長く存在している本省人と外省人の省籍問題もからんでいる。
 台湾と中国との関係を理解するうえでもなかなかいいケーススタディになるのではないだろうか。

© 2021 Nojima Tsuyoshi