2012/08/14
深夜に突如、背後で自分の名前が呼ばれて驚かない人はいないだろう。
台湾で故宮の本を宣伝していた8月6日、私は中国広播電台で、ある「名嘴」(コメンテーター)の番組に出演した。収録前、スタジオで彼と挨拶を交わし、すぐに世間話となった。話題は当時最もホットだった台湾海軍が日本の防空識別線を越えた問題だった。
「あの問題、日本はどんな感じ?」と聞かれ、「ほとんど報道されていないし、日本政府も一切声明を出していないから、日本人は誰も知らないんじゃないですか。台湾でこれほど騒いでいるのは正直、やや意外な感じがしますね」などと気軽に答えた。
それからすぐに収録になり、この「名嘴」先生はなかなか故宮問題には詳しい人だったので、番組での対話はなかなか盛り上がった。
その日の夜、ホテルに戻ってテレビを適当につけ、パソコンを開いて仕事のメールに返事を書いていると、後ろで「野島剛」という私の名前を誰かが呼んだ気がした。
振り返ると、テレビではいつもの政治討論番組を放送しているだけ。気のせいに違いないと思って再びパソコンに向かうと、また「野島剛が・・・」と私の名前が呼ばれた。
改めてテレビの画面をよく見ると、昼間の番組で出会った「名嘴」先生がいて、例の海軍問題について、「朝日新聞政治部副主任の野嶋剛が私に語ったところによると・・・・・」と語っているではないか。
まさか、あのときの「世間話」がコメントとなって社会に伝えられるなど、まったく想像もしていなかった。
しかも私は「政治部副主任」ではなく、「国際編集部副主任」。「名嘴」先生はその後も私の名前をテレビで何回も呼び続けた。見ながら背中に冷たい汗がじわっと流れた。
翌日、ある新聞のコラムニストの友人にこの件を伝えると、「你被名嘴消費了」(お前は名嘴にしてやられたんだよ)と爆笑され、
「彼らと話すときは気をつけないといけないのは常識だ。名嘴は台湾で生まれた怪獣。お前は台湾に3年もいたのに、まだまだ学習が足りない」と言われてしまった。
まだまだ勉強が足りない・・・。