2012/12/15
新聞社の中にいると、毎日たくさんのニュースに埋没してしまって、
いつの間にか、何が大事なのは忘れてしまいがちだ。
そんなときに外国人の視点というか素朴な疑問にハッとさせられることが多い。
今週、台湾と中国から、それぞれメディアの友人が総選挙の取材に来ていて話を聞かれた。
彼らが口々に聞くのは、東日本大震災と原発事故の選挙への影響だ。
震災対応がうまくできなかったことが、民主党の劣勢につながっていることまでは論理的に説明できる。
しかし、未来やその他脱原発を掲げた政党が伸びず、脱原発に消極的な自民党や維新の会が伸びているのはどういうことか聞かれても、そこに外国人が一発で理解できる話ができないのである。
「日本人のいまマジョリティーは原発というテクノロジーに大きな不信感を抱いている。
ならば、原発のない新しい国家を造ろうと、どうして日本人は思わないのか」
そんな風に、台湾の記者に質問されて、今回の選挙の「煮え切らない感じ」の原因が分かった気がしした。
今回の選挙は本来「脱原発」が最大の争点として、日本人の選択を問うべきだった。
しかし、第三極の混乱と、民主と自民の脱原発への主張がはっきりしないことが、
この脱原発の問題をあいまいにし、選挙の争点にならないようにしたのだろう。
そこには、政党の離合集散など表面的な権力ゲームにどうしても引き寄せられるメディアの弱点があったことと、同時に、日本社会に脱原発という政治的にも経済的にも外交的にも骨の折れる仕事に立ち向かうパワーがなくなっているのではないか、そんな気がしている。
明日は投票。私は20代に佐賀県で九州電力の玄海原発担当になり、発電によって出てくる放射性廃棄物の処理方法に全く科学的な解決のメドがないことを知って以来、原発を段階的になくしていくべきだと考えてきた。福島の事故でその考えは確信になった。その方向に日本を導いてくれる政党にせめて一票を投じたい。