2013/01/31

自転車

 自転車ロードレースの英雄、米国のランス・アームストロングのドーピングをやっていたことを「告白」する報道が、先週、一斉に世界中の通信社やテレビ番組で流された。しかし、日本での報じられ方はあまりに目立たない扱いで、この問題の深刻さを到底反映していないと感じられる。
 また、この問題について、日本の自転車レース関係者があまり積極的にコメントしていない印象があるが、気のせいだろうか。どうもあまりの事態の深刻さに、どのように対応していいか分からない、というのが正直がところなのではないだろうか。
 もしアームストロングが言った「みんな薬物を使っていた。私がこうした風潮を作り出したわけではない」ということが本当なら、自転車ロードレースの抱える病の重さは半端なものではなく、ロードの戦いを美化してきたスポーツメディアの罪の重さも改めて問われなければならない。
 日本語であまり詳しく報じられなかったので、アームストロングの「告白」の翻訳を書いておきたい。以下、ロイター通信とのインタビューの一問一答である。

Q あなたは禁止された薬物を使ってパフォーマンスを高めてきたのか。
A イエス。
Q あなたが使った禁止薬物にはエリスロポエチン(EPO)が含まれていたのか。
A イエス。
Q 成長ホルモンやテストステロンも使用していたのか。
A イエス。
Q ツールドフランスでの7連覇の際は、すべて薬物を使っていたのか。
A イエス。
Q もし薬物を使っていなかったら、こうした成績を残せたと思うか。
A あの時代では無理だ。みんな薬物を使っていた。私がこうした風潮を作り出したわけではない。私はただ止めようとしなかっただけだ。しかし2005年以降は使っていなかった。2009年の再参戦の時は使っていなかった。(使っていたとの報道は)うそだ。
Q なぜいまになって使用を認めたのか。
A 確かに認めるのが遅すぎた。私の過ちだ。しかも何度も繰り返し大きなウソをつきつづけた。私のこのような行為が自転車ファンを失望させたことには大変残念に思う。私もうすでに他人から信頼されるような人間ではない。人々を完全に憤らせてしまった。
Q なぜずっと薬物使用を否定していたのか。
A 私は真相を知っていた。ただ事実を語っていなかっただけだ。私のストーリーはあまりに完全な美談として存在していた。がんに打ち勝ち、ツールドフランスを七回勝利し、幸福な結婚と子供にも恵まれた。夢のようなストーリーだ。しかしこれらは本当のことではなかった。
Q ほかにもツールで勝利した選手は薬物を使っていたのか。
A 他人のことをどうこう言いたくはない。しかし、私は少なくとも5つの名前を挙げることができる。しかし、私は自分の過ちを認めるためにここにいるわけで、他人を指弾するためではない。
Q あなたはチームメイトに薬物使用を強制し、従わないとチームから放逐すると脅迫したのか。
A そんな事実はない。チームメイトが断ったとしても問題ではないからだ。しかし、確かに私は彼らに対し、絶対に口外しないように脅迫したことはあった。
Q なぜ薬物を使ったのか。
A がんを患った後、何かを成し遂げたかった。そうすることで生き続ける勇気がもてると感じた。ツールで勝利するためにはどんな犠牲も怖くなかった。
Q 薬物使用が発覚することは怖くなかったか。
A 心配したことはない。買っては抜き打ち検査もなかった。競技中以外での検査もなかった。多くの薬は使用後6~8時間が経過すれば検出されないので、証拠を隠すことは簡単だった。
Q 薬物使用の際に不安を感じたことはあるか。
A ない、ない、ない。当時は悪いことと思わなかった。過ちとも思わなかったし、いかさまをやっているなんて思いもよらなかった。

 なんというか、このインタビューを読んでいると、本当にロードの世界は腐りきっていたということが分かる。「そういう時代だった」と済まされて良い問題ではないとも思う。それとも、アームストロングだけ特別で、ほかの選手はクリーンだったのだろうか。
 アームストロングが米反ドーピング機関(USADA)からドーピング違反と認定され、ツール7連覇やシドニー五輪の銀メダルなど生涯すべてのタイトル剥奪(はくだつ)や永久資格停止処分を受けたことは当然だが、ほかの選手たちについてもいくら何年も前の話だからといってもあきらめずに徹底的に調べて真相を究明する義務がロードレース界にはある。

© 2021 Nojima Tsuyoshi