2013/06/12

中国グルメ

$私は書きたい


上海に行った。どうしても「酔蟹」(酔っぱらい蟹)を食べたくなって、蟹専門レストランに電話をかけ、「酔蟹、有没有?」「有!」と電話で確認してから店に向かった。

酔蟹とは、上海や浙江省などでよく食べられる蟹料理で、いろいろ調味料や薬材を店によって変えているが、基本的には、生の上海蟹を、紹興酒につけ込んだものである。

ただでさえ美味しい上海蟹のミソのが、酔蟹にすると、別次元の上等なものになる。
洗練されたチーズに近いような、ちょっとあり得ないうまさだ。

運が悪いと寄生虫がいるという話も聞くが、少々リスクがあるほど逆に有り難く感じてしまう。

今回も大変美味しかったのだが、酔蟹を食べながら、文革の四人組のことを思い出していた。
ちょうと上海に行く直前に読んでいた本に、四人組が逮捕された当時、人々は争って蟹を食べたと書いていたからだ。

張春橋、王洪文、姚文元、そして江青。この四人がこそこそ暗躍している様子を中国の人々は横歩きしかできない蟹に例えた。しかも、蟹を食べるとき「三公一母」つまり、オス三匹にメス一匹を食べたというからなかなか徹底していたものだ。

宋家三姉妹で国家副主席にもなった宋慶齢まで四人組の失脚に大喜びして「三公一母」を注文したというエピソードがその本には書いてあったが、敵を例えた食材を食べるというのは、よく考えると原始的で呪術的な行為でもある。

四人組=蟹を食べることによって、中国人は文化大革命という傷を癒やすおまじないをしたのではないだろうか、その首謀者であり、人民の純真を利用した毛沢東の責任を問うこともなく、すべての責任を四人組に押しつけて、しかし、それも混乱を収束させる一つの智慧だったのだろうな、などと考えながら、季節外れの酔蟹をたっぷりねっとり楽しませてもらった。

© 2019 Nojima Tsuyoshi