2013/09/25

台湾映画

$私は書きたい

2013年の台湾映画でベストを聞かれたら、迷いなくこの作品を挙げたい。
台湾映画のホラーは怖くない、台湾人にホラーは撮れないという定説が私の中にあったが、
この作品を観た後にその考えは間違っていたことを反省した。

ただ、この作品はホラーとは言い切れないところがある。
ホラーというより、サイコサスペンスのほうがふさわしいかも知れない。
映像がとにかく美しい。魚、昆虫、植物、雲、木々などがリアルに美しすぎて逆に背筋が凍る。

登場人物はわずか数人だ。
演技派若手俳優の張孝全が演じる「阿川」に突然、「別人」が入り込む。

まるで魂が乗っ取られたようになり、残酷な別人格になった阿川は、姉を殺してしまう。阿川の殺人に対し、父はその殺人を隠蔽するために、姉の夫や、刑事までも殺してしまう。

阿川に対し、父は深い負い目を追っていた。不治の病に苦しむ阿川の母を、父は殺害し、その現場を阿川に目撃されていたのである。ストーリーは人間の心とは何かを考えさせるラストに突入していく。

舞台になるのは、台湾の山奥だ。地名はほとんど明かされないが、どこであるかに大きな意味はない。姉を殺した阿川を、父は山小屋に閉じ込める。

この山小屋を舞台にした監督の手腕に敬意を表したい。山小屋のなかで、冷静に淡々と反撃を狙い、実行していく阿川の姿を見ていると、山小屋に閉じ込められている方が弱者なのか強者なのか分からなくなってくる。

まるで外にいる方が、阿川に操られているような気になってくる。その「箱の中」の怖さがこの作品のコアにある。初めて体験する「箱サスペンス」だった。

阿川を演じた張孝全が、抜群にうまいです。脱帽。
去年「男朋友。女朋友」で金馬奨の主演男優賞を取って、乗りに乗っている感じ。

もしかすると今年も金馬奨に絡んでくるかもしれない。
ちなみに最近の台湾でのヒット作「被偷走的五年」でも好演しているらしい。

嬉しいことに、この映画も今度の東京国際映画祭に来る。

© 2021 Nojima Tsuyoshi