台湾の馬英九総統と、王金平立法院長の政争が続いていて、
もともと「9月政争」と呼ばれていたが、10月に突入することになった。
かなり複雑な状況だが、総じて言えるのが、
この政争を仕掛けた側の馬英九総統の旗色が日々悪くなっているということだろう。
その意味では、短期決戦の勝利で片を付けたかった戦略は完全に狂ってしまった。

いまのところ、戦いは三つの部分で進行していると整理できそうだ。

1、王金平の党籍剝奪の法的争いでは、昨日、台湾高裁が、党籍維持の仮処分を認める王金平勝訴の決定を、台北地裁に続いて下した。馬英九サイドは最高裁に上訴する予定だが、まずひっくり返らないだろうと見られており、党籍剝奪による立法院長の引きずり下ろしは難しくなった。これは馬英九にとって、最大最悪の誤算だろう。

2、盗聴問題が派生的に問題化して、今回の捜査のなかで、特捜チームが立法院の代表電話も盗聴していたことが判明した。これは完全に違法行為で、特捜チームは手続き上のミスだと釈明しているが、立法委員たちは民進党だけではなく国民党までも大騒ぎで批判を始めており、今回の問題で前面に立ってきた黄世銘・検察総長の首を取ろうという動きになっている。検察の盗聴のあり方が批判されるほど、今回の口利き問題批判の正当性も問われることになる。

3、今回の司法案件に対する王金平の「口利き」問題に対する対処が世論のなかでどのように受け止められるかという、ある意味で台湾政治で最も大事な部分でも、「口利きは良くないが、立法院長を辞めさせるほどではない」という世論がほとんと定着しつつある。王金平が一貫して馬英九への直接批判を避けて低姿勢を保っていることへの同情もあって、世論という土俵でも馬英九は窮地に立たされている。

つまり、この三方面の戦いで、馬英九はいずれも旗色が悪いということだ。

そんななかで、浮かび上がってきたのが、立法院の解散だ。日本の総選挙と似たようなもので、行政院長には立法院の解散権がある。馬英九のブレーンである陳長文が先日、聯合報で解散を呼びかけて話題になった。しかし、今回解散すれば、王金平は間違いなく選挙区から当選してくるだろう。そうすると、さらに、昨日、民進党の蘇貞昌主席が記者会見で陳長文の提案に全面的に賛成する意見を示したのもの、選挙になれば、民進党は間違いなく議席を増やせそうだからだ。そのため、国民党の立法委員たちは解散には積極的ではない。

結局、馬英九にはいい退路がほとんど見あたらないということになる。

近づいている10月10日の双十節は、台湾のナショナルデーであり、
王金平立法院長が主催者となって馬英九総統を招待する形式になっている。
会場では、二人が長時間、並んでパレードを見ることになる。
29日に予定されいてた四年に一度の国民党大会は10月26日に延期することでかろうじて馬英九総統は恥をかくことを回避したが、
双十節はさすがに逃れられない。いったいどうなるのだろうか。

© 2021 Nojima Tsuyoshi