昨晩のNHK「クローズアップ現代」で、ホンハイが、日本人技術者を大量に雇い入れて、次世代液晶パネルとして有機ELの開発に取り組んでいる、という番組を放送していた。

有機ELを使った液晶の技術的将来性やその難しさについては専門家でないのでひとまず措いておくとして、この番組の制作に同意したホンハイの創業者・郭泰銘の思惑についてはいろいろ考えさせられることが多かった。

もともと郭泰銘は日台連携論者だ。日本の技術、台湾の生産化のノウハウとマーケティングを結びつけ、韓国勢、特に宿敵であるサムスンに対抗しようということ公言してきた。
そのなかで郭泰銘が押し進めたホンハイとシャープとの提携は数年間の紆余曲折の末に破綻状態に陥った。郭泰銘から言わせれば、シャープの保守的(守旧的)な体質はどうしようもなく、こちらがもうけ話を持ちかけているので、さんざん時間をかけたあげく、中途半端な結論しか出せない、ということで、心底から失望したのである。

そこに次の作戦として仕掛けたのが今回の日本人技術者たちのヘッドハントだ。象徴的だったのが、チームリーダーとして登場したシャープの技術者。すでに定年退職したあとにホンハイに入ったので、必ずしもヘッドハントということではないが、シャープに対する相当なあてつけ、という意味を持つはずで、この番組をシャープの関係者はどういう気分で眺めただろうか。

郭泰銘がインタビューに応じ、自分の日々のビジネス活動の様子まで画に取らせていたのも驚いた。滅多にインタビューを受けないことで知られており(筆者も失敗)、しかもテレビへの登場はかなり少ないはずで、それだけ、この番組への期待は大きかったのだろう。もちろんシャープへの悪口などは一言もなく、普段の攻撃性も抑え、とにかく日本の技術者と一緒にやっていきたい、というエンジェル的な対応に徹していたところも、逆に怖さを感じないわけではない。

もちろんこれは番組をみた誰も感じたことかも知れないが、ホンハイがやっていることは、決して日本人にとってマイナスではない。日本のメーカーがいまその体制をシュリンクさせていくなか、抱え込んできた生え抜きの技術者たちは行く場を失って、早期退職や技術と関係ない部署への配転の苦しみを味わっている人も多いだろう。

そんな人々が、海外のメーカーとはいえ、現実に自分の技術を行かせる場をもらえるわけで、画面に登場した日本人たちの表情が生き生きとしていたことは、やはり印象的であった。また、日本の中小企業はよく日本の宝と言われるが産業政策には冷淡に扱われているのが現実で、特に大企業重視の安倍政権ではますます立場が弱まってると想像できるが、その技術を日本人を通じて拾い集め、活性化させようというのだから、逆に郭泰銘にお礼を言ってもいいぐらいの話である。

© 2021 Nojima Tsuyoshi