2015/09/29

中華文明

 サントリー美術館でやっていた藤田美術館の精品展が今週末限りで終わってしまうというので、なんとか時間をやりくりして滑り込みで見ることができた。行ってよかったとつくづく思った。

 というのも、藤田美術館のコレクションは、春秋の展覧会以外には滅多に外に出る機会はなく、今回のサントリー美術館、それに続く福岡市美術館での展示は、その虎の子の品である「曜変天目茶碗」や、快慶作の仏像、絶品の茶碗の数々など非常にクオリティが高いものを取り揃えている。
 これだけ傑作の密度の高い展覧会はそうない。展示スペースも広くない。だが、閑談なく国宝、重文の品々が目に飛び込んでくるので、緊張しっぱなして1時間の鑑賞のあとはぐったりした。
 それにしても、茶碗のバラエティには、脱帽である。曜変天目茶碗は、まるで宇宙空間を思わせる展示方法で、「やり過ぎでは」と観客から笑いが出るほどだったが、夜空にまたたく星のような曜変に合わせたもので、このぐらいやってもいいかもしれない。東博の台北故宮展の翠玉白菜の展示を思わせるショウアップぶりだった。
 いちばん打ちのめされたのは、楽茶碗の黒楽茶碗「残月」。漆黒の姿なのに、清々しさも感じる。菊花天目茶碗も、美濃のような、瀬戸のような、天目風の茶碗なのだが、手元にあったらいくらでもお茶が飲みたくなりそうなほど、造詣と絵付けのバランスが素晴らしい。
 それにしても、茶道趣味に絡んだ骨董趣味は、日本特有の世界である。中国でこんなお茶碗はあまり造られない。麺を食べるには小さ過ぎるし、お茶を飲むには大き過ぎる。中国で陶器は近代に近づくほど少なくなり、小さなお茶を飲むための杯はたくさん造られたが、日本のお茶碗のようなものはなく、中国人が日本に買い取りにきてみあまりお金を出さないタイプでもあるので、中国の流出しないで済むことはいいことだ。考えてみると、日本ではご飯を食べるのもお茶碗と呼ぶ。ご飯茶碗などと言ったりする。この言葉時代に矛盾がある。日本でお茶碗が愛好された証拠かもしれない。
 27日でサントリー美術館の展示は終了したが、もしも興味があったら、10月6日から展覧会が移動する福岡市美術館に飛んででも見に行くべき内容だと思えた。

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