2016/10/02

台湾映画

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ちょうど台湾はいま映画の入れ替え期にあたって、ほんんど台湾映画が上映されていないのだが、そのなかで一つだけ上映されていた台湾映画「我的蛋男情人」(My egg boy) 。直訳すると「卵子が私の恋人」になってしまうのだが、基本的には、高齢出産という問題に直面した女性が、自分の卵子を冷凍保存しながら、病気で精子を失っている男性と出会い、結ばれるかどうか、というお話である。

主演の二人は林依晨(アリエル・リン)と鳳小岳(リディアン・ヴォーン)。2人とも映画では主役を張った実績こそ少ないが、知名度も高い組み合わせで、2人が一緒にいる雰囲気も悪くはない。ちょっとしたトレンディドラマ風でもあるし、鳳小岳がシェフという役柄はなかなかに似合っていた。

「冷凍」というテーマを際立たせるためか、女性は冷凍食品会社で働いて、日々、冷凍餃子や冷凍肉まんなどの試食をしたりしている。会社の業績がいま一つで、建て直しの責任者を命じられた女性は、いま人気のイタリアン(スペイン?)料理店のオーナーシェフの男性に目をつけ、美味しく食べられる冷凍食品の共同開発を持ちかけるが、冷凍食品を軽蔑している鳳小岳からはにべもなく拒否されてしまうが、若い頃に出奔した父親不在の家庭で、母の手ひとつで育てられ、いつも冷凍庫の保存されていた母の手料理で育った女性は、どうにか冷凍食品の大切さを世の中に伝えるため、諦めないで必死に説得を続け、その間に二人の関係がしだいに・・・というストーリーである。

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冷凍食品で働いている女性と、いま台湾で大流行りの「私房菜(隠れ家料理店)」の一流料理店で働いている男性の出会い、という設定はなかなかいい。高齢出産という問題に直面する女性が主人公というのも、ありがちではあるが、多くの人に訴えかけるテーマではあるだろう。出ている俳優も主演の2人だけでなく、映画監督でもあり、いまや国民的CMキャタクターの呉念真や、ベテラン女優の李烈など、脇役もしっかりと固めている。しかしながらく、作品としては、成功していないと言わざるを得ない。

私がしっくりこなかった最大の理由は、ファンタジー部分の絡め方である。台湾映画は、けっこう夢とか想像とかの心の中の世界を具現化させるファンタジー部分を大切にする傾向がある。「南方小羊牧場」とか「Orzボーイズ」とか、ファンタジーを混ぜて成功している作品も少なくない。

日本人的リアリズムからするとちょっと苦手に感じてしまうかも知れないが、私はそれはそれでロマンチストぞろいの台湾社会の特徴を浮かび上がらせていて別に嫌いではないと思っていた。しかしそれも程度の問題がある。監督は長編映画がほとんど初挑戦という傅天余という女性なのだが、明らかにファンタジーを引っ張り過ぎで、頭の中にある理想を貫きたい気持ちは分かるが、周囲にいる大人たちがちゃんともっとアドバイスして欲しかった。

この映画では、およそ見積もっても3分の1から4分の1がファンタジーで構成されており、真っ白な衣装に身を包んだ精子と卵子たちが、実際に語ったり、悩んだり、主人公たちと会話をしているのだが、あまりにも出過ぎてくるので、最後の方は「いい加減にしろ」とぼやきたくなってしまった。いい作品になるだけの要素があるのに、そうすることができなかった惜しい作品である。

★★(五つで満点)

 

© 2021 Nojima Tsuyoshi