2018/02/21

その他

 島根の「キリスト教愛真高校」というところで「日本人が台湾を理解するために必要なこと」というテーマで、講演させていただいた。実際は講演というより「研修」ぐらいの内容で、午前中3時間、午後1時間半にわたって、台湾について理解してほしいあらゆることを語ってきた。さすがにこの5時間を超えるロングラン講義はくたくたに疲れたけれど(きっと生徒たちも)、大変楽しい時間であった。

 この愛真高校は、島根県の江津というところにあり、レンタカーで行ったのだけれど、日本海から吹き付ける風で横なぐりの雪の降るなか、「本当にここに高校があるんだろうか」と不安にかられながら、小高い山の細いくねくね道をひたすら登った。ここは「日本でいちばん小さな高校」といわれていて、内村鑑三の流れをくむ無教会主義のキリスト教系学校で、普通科の全寮制で、生徒は三学年でわずか50人、日本全国から集まってきている。

 高校での講演では大変珍しいことだけれど、積極的な質問が次々と出てきて驚かされた。「現在の独立意識の強い若者たちは中華民国についてどう考えているのですか?」といった、大学生からも出てこないような専門家でも答えにくい台湾問題の核心をついた質問が続々と出てた。
 愛真高校は平和教育に力を入れているようで、私としては、他国に対する植民地統治というのは今後起きるべきではないという前提に立ったうえで、「植民地=よくないこと」という今の価値観だけで日本の台湾統治の50年間を見てしまうと、どうしてもそこから抜け落ちてしまうことがたくさんあり、同時に、戦後の台湾のあゆみを理解するうえでも今の台湾を理解するうえでもうまくいかないところが出てくる、という考え方をできるだけ伝えたつもりだった。その際には花蓮の地震でどうして安倍首相がわざわざ「台湾加油」と書いたビデオメッセージを送ったかについてや、「セデック・バレ」「KANO」「パッテンライ」「湾生回家」などの映画で扱われたテーマを例に引きながら説明していった。

 生徒たちが私のために練習したゴスペルソングを歌ってくれて感動。これも生徒たち手作りのパンやご飯のお昼もいただいた。山陰地方は大変な寒さで厳しい気候のなか、マフラーを巻きながらの授業であったが気持ちのほうが実に温まる一日だった。島根は二度目。今度は隠岐に行ってみたい。

© 2024 Nojima Tsuyoshi