2026/08/29

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【夏の本棚】
近藤伸ニ『台北特派員秘録:若菜正義と「白色テロ」の時代 』白水社

台湾でかつて行政院新聞局(今は存在しないメディア担当の役所)で働いていた友人とランチをしていたら、この本の話題になった。若菜さんは1990年代以前、指折りの台湾通日本記者だった。若菜さんが台湾報道の現場から離れていったぐらいに私はこの業界に入ってきたのでタイミング的にはちょうど入れ違いでお会いしたことはなく、『台湾総覧』という分厚い本を毎年出しているすごい人という評判しか聞いていなかった。本書は彼の人生と台湾政治への影響力を掘り起すもので、知らない情報がたくさん載っていて近藤さんには感謝である。蒋介石・蒋経国のもと、台湾から特派員が産経以外一掃された日本の「台湾情報暗黒時代」の70ー80年代を支えてきた若菜さんのレガシーを知ることができて大変よかった。報道からみた台湾政治史という本はこれまで一冊もなかったと思うので、その意味でも貴重な刊行だと思う。あと若菜さんの丁寧すぎる働きが佐賀人らしい。とにかく佐賀人は頑固、地道、堅実でやはり佐賀人はこうだなと納得してしまった。本書の主題とはズレるが、本書には若菜さんの知人の本田善彦、早田健文、故岡田充各氏など私よりも一つ上の世代の台湾ウオッチャーがたくさん登場している。最近彼らの台湾観に違和感を感じることもあるが、私の書いているものも下の世代からみると違和感があってまったくおかしくない。人間は生存する時代や環境から離れて思考を持つことは難しい。メタ的に見た世代間の台湾理解の温度差というのは興味深い問題だと思う。

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