2012/03/10

台湾

つい先日、台湾に行ったとき、タクシーで松山空港に向かおうとしたときのこと。
「お客さん、よかったら、あの、シートベルト、してくれませんか」

運転手さんに言われて、「あれ、後部座席はしなくてもいいんじゃありませんでしたか」と尋ねた。
すると、ものすごく言いにくそうに、「それが、あの、すいません、実はですね、大変申し訳ないんだけど、ルールが変わりまして・・・」。
そこでハッとした。

台湾では、2月から法律が変わって、乗用車の後部座席でもシートベルトの着用義務に違反した場合、
乗客に最高6000元の罰金が科されるようになったのだ。
そして、運転手さんが何かちょっとおどおどしている理由も分かった。

日台ハーフで、台湾で人気のあったタレントのMAKIYOが、タクシーの運転手に暴行を働いた事件でも、このシートベルト問題で、着用を運転手に求められて口論になったのがきっかけだった。

一緒にいた日本人男性には懲役六年、MAKIYOには懲役四年が求刑され、裁判が進行中だが、MAKIYOはすでに労働許可を取り消されて芸能人生命は完全にたたれてしまった。

MAKIYO、本名は川島茉樹代。取材で会ったこともあって、
「横浜出身なんですか?私もですよ」という会話も交わした記憶がある。

この事件、日本ではそれほどたくさんは報じられていないが、
台湾では連日トップ級のニュースで、日本への感情悪化も懸念されるほど、大騒ぎになった。
特にMAKIYOが「運転手に胸を触られた」と記者会見で嘘をついたこともまずかった。

タクシーとシートベルトと日本人。
私にシートベルトを締めるように注意してくれた運転手さんの脳裏には、
きっとこの事件のことがあって、
「やべえ、日本人だ、怒ったらどうしよう」
とか心配してくれていたのだろうか。

そう考えると、ちょっと申し訳ない気分。
でも、すぐにベルトを締めたら、運転手さんはにっこり笑った。

© 2024 Nojima Tsuyoshi