2012/03/24

食とエンタメ

先月、美しい海岸線で有名な宮城県の松島を訪ねてみた。松島観光にとって、欠かせない楽しみの一つが、水質のきれいな松島湾で養殖されたカキ。

しかし、震災後に発生した津波によって、カキの養殖棚も甚大な被害を受けたらしく、今シーズンの生産量は、例年の1割程度に落ち込むのではないかと推測されていた。

だから、カキ料理にありつくことは諦めていたのだが、年が明けるとカキの出荷量が増えてきて、カキ料理のお店も次第に営業を始めていたのだった。
私にとって、カキは三本の指に入るほどの大好物。台湾でも日本でも他の海外でも、カキと見るや、やたらに注文してしまう。

オーストラリアやフランスに行くと、夢中になって生ガキを食べまくっている。
日本では、冬はやはりカキフライ。カキは熱すると味が濃くなる。からっと上がったカキを口の中に放り込むと、どろりと濃厚なカキの中身が溶け出して、たまらない。カキ鍋も美味しいが、鍋の中で煮ている間にカキが縮んでしまうのがちょっともったいない。
松島のカキは、大ぶりのカキを醤油と生姜で煮て、ご飯のうえに載せて食べる「カキ丼」が有名である。

しかし、私は今回、松島にある生鮮市場に併設したお店「焼きがきハウス」で、焼きカキを食べることにした。「食べ放題」という売り文句に惹かれた。ふつう、カキって食べ放題じゃないから。

お店に入ると、6~7枚の巨大な鉄板がおいてあり、その鉄板一枚の周囲に席が並んでいた。メニューは単純極まりなく、たったの三種類。

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Aセット(45分食べ放題+かきご飯+かき汁)2500円
Bセット(45分かき食べ放題)2000円
Cセット(焼がき10ヶ+かきご飯+かき汁)1500円
私は迷わずBを選んだ。理由は簡単。カキ以外は食べたくないからだ。

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注文すると、お店のおばさんがアルミニウムのバケツに山盛りのカキをもってきて、鉄板のうえに「がらがら」と置いて、そのうえに巨大なフタを置いた。

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下からはバーナーで鉄板が熱せられている。「15分待って下さい」と言われ、早く早くと心のなかで思いながら、やっとおばさんが戻ってきて、「お待たせしました。じゃあ、開けますね」と言って、開けたとたん、蒸気がばっと広がり、カキの強烈な海の香りに包まれた。

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蒸し焼きのカキは、ほこほこと湯気を立てている。
「ほどよい塩加減だから、何もつけなくていいからね」とおばさんに言われ、軍手を左手にはめて、あつあつのカキを手に取り、右手の金具で一個ずつカキの殻をこじあげていく。

「殻をうまくあけるには、貝柱の場所を見極めるのが大切よ」
おばちゃんに教えてもらった。
平らな殻を上にして、左手の手のひらに蝶つがいを当てるように持つ。貝柱のある部分が正面に来るようにして、金具をそこにさしこむと、パカッと殻が開いた。

一つ口に入れると、ちょっと大げさだが、あまりの美味しさに眩暈がした。これほど美味しいカキを食べたのは一生の内で何度目だろうか・・・熱を加えられ、ぱんぱんになったカキの内臓部を口のなかで割ると、舌がやけどしそうなほどのスープが飛び出し、カキのうまみが口のなかで渾然一体となるのである。

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五個ぐらいを空けては、右手の金具を箸に持ちかえ、夢中で食べ続けた。何個食べたか最初は数えようと思っていたが、いつのまにかカキを空けては食べることだけに注意力が向いてしまったので、すっかり忘れてしまった。結局、バケツをもう一杯おかわりして食べていたら、45分間の時間切れになったが、お腹はもう大量のカキで満杯だ。

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 私の食べっぷりを見ていたお店の人も全国有数の観光名所でおいしく食べてもらえれば、それだけで県の復興につながります。松島産のカキは濃厚な味とプリプリした食感が特徴。心ゆくまで食べてもらえて、うれしいです」と言ってくれた。
被災地に来て、美味しいものを食べて少し罪悪感があったが、この言葉ですっきり。日本中、いや世界中から食べにくる価値があると思った。それで被災地に活気が生まれればいいことだと思う。

© 2021 Nojima Tsuyoshi