2013/02/15

台湾

$私は書きたい

最近発売になった文芸春秋の3月号で「司馬遼太郎が見たアジア」という特集があった。
いろいろと勉強になるところが多い特集だったが、なかでも、台湾の李登輝さんが「台湾に感じたやすらぎ」と題した一文をじっくり読み込んで、いろいろ考えさせられた。

一読した感想は、確かに面白い内容ではあったが、李登輝さんの文章にいつものキレというかけれん味というか、読んでいて引き込まれる「何か」が少なかったと感じられた。高齢ということもあるだろうが、もしかしたら体調でも良くなかったのだろうか。

ともかく「台湾紀行」はいうまでもなく台湾に関心を持つ人が手に取る「初等教科書」のような本である。私も、何度も何度も読み込んだ。読むたびに発見がある。特に、国とは何か、民族とは何か、ということを台湾を通じて理解しようとした歴史作家としての視点の鋭さには感嘆させられる。

そして、李登輝さんも「司馬先生はこよなく台湾を愛しました」とこの一文のなかで言っているように、台湾に対する限りない好意を持ってこの本が書かれているため、読み手も司馬遼太郎さんの「熱」に感染してしまうことがある。

司馬遼太郎さんは、台湾が変わろうとしている最もいい時期に台湾を訪れ、李登輝さんと対話し、台湾の未来に多くの希望を見いだした。その後、台湾では台湾海峡危機があり、民進党による政権交代があり、国民党が政権を取り戻し、中台関係が大きく改善する、といった歴史を歩んだ。そのなかには司馬遼太郎さんが思い描いたものと同じものもあれば、違っていたものもあるだろう。

読んでいて気づいたのだが、台湾紀行が週刊朝日誌上で連載されてからちょうど今年で20年になる。その司馬遼太郎さんの記述とその後の台湾の歩みを比較しながら、「台湾紀行」というテキストを客観的に再読、検証していく作業が必要ではないだろうか。

© 2024 Nojima Tsuyoshi