2013/06/23

台湾映画

$私は書きたい

昨年話題となった映画「逆光飛翔(邦題:光にふれる)」のDVDが出た。
上映時期は見逃していたので、早速購入して観た。

ちなみに、主題歌の「很靠近海 By the sea」は大ファンである蔡健雅が歌っている。
作曲は、昔、台北特派員時代に、日本の交流協会で文化を担当していた馬場さん。
いまは独立して台湾で音楽活動をやっている。この映画にもちょい役で出演していたびっくり。

主演は「陽陽」の張榕容、全盲のピアニストでこのストーリーのモデルにもなった黄裕翔。
テレビショッピングにはまってカードのローン地獄に陥っている母親を抱え、
大好きなダンスに打ち込めないで苦しんでいる。
ピアノにすぐれた才能を持ちながら、目の見えないハンデから、自分を閉ざしている裕翔。
この二人がふとしたことから出会い、心を重ね、お互いの未来に向き合っていく、という話だ。

張榕容の演技がとても良かった。中途半端な自分にいらだつやるせない気持ちをうまく演じていた。主演は「陽陽」から3~4年ぶりだと思うが、もっとたくさん出ていい人だ。ただ、顔つきが欧米の血が入っているだけあって、役どころが選ばれてしまう傾向もあるのかも知れない。
残念なのは、ちょっと太りすぎだったこと。いつもアップは上半身だけ。あとはロングでやっていて、全身をカメラで写せないぐらいだったと思う。特にダンサー役では問題がある。

個人的に注目したのは、尹馨という、黄裕翔の教師役だった女優。
台湾では、彼女は巨乳の代名詞のような存在で、芸能欄にスキャンダルが報じられることも多い人なのだが、女優としての才能がけっこうあるんじゃないのだろうか。
裕翔の才能を認めて育てていこうという教師として、とてもいい味を出していた。

台湾映画には、この「逆光飛翔」のような、こぢんまりとして、暖かいヒューマニズムで観客を満足させる映画のジャンルが確かに存在していて、どの映画もかなりクオリティが高い。以前この欄で紹介した「聴説」などその代表格である。

日本映画では、こうしたジャンルがないわけではないが、どこか押しつけがましく「愛してるんだ」とかを連発して、ちょっと気持ち悪いぐらい純愛とかを強調してしまう傾向にある。
しかし、台湾映画では「愛してる」とか「絶対離さない」というストーリーは少ない。
ほどよく現実的で、その中にもちょっと笑いを織り交ぜてくる。これは、「小さく優しい」という、台湾の土地柄も体現しているのではないかと私はどうしても考えてしまう。

© 2024 Nojima Tsuyoshi