2014/02/27

中国映画

日中合作の映画「黒四角」を、試写会で観た。
新進気鋭の日本人監督、奥原浩志が撮り、4人の主要登場人物のうち、
日本人と中国人が2人ずつ。
タイトルは「くろしかく」と読むが、
中国語の語感「へいすーじゃお」の響きがいい。

「黒四角」という、真っ黒に塗りつぶされた不思議な絵が、映画の舞台回しとして登場する。
その「黒四角」を通して、時空を超えた人間たちが出会う物語だ。
このように書くと、SF的に思われるかも知れないが、まったくSF的な雰囲気はなく、
それぞれの人間の「根」がどこにあるのかを問いかける重厚な物語だった。

現在の北京の芸術家村と、60年前の日中戦争の中国の農村が、
実は一つにつながっているという設定なのだが、
途中まではまったくそうした展開になるとは予想がつかなかった。

中国に生きる人々の姿が素直に描かれていて引き込まれた。
芸術家たちの、自由で優しい生き方に好感が持てる。
おそらく、中国人俳優として参加していた主役のチャオピンを演じた陳璽旭と、
その妹であるリーホワを演じた丹虹の二人の演技がなかなか巧みだ。
総じて言えることだが、中国の若手は演技がたいてい上手だが、この二人もなかなかだった。

いい映画なのに、中国では、日中戦争の絡みもあって審査を通らず、上映されていないという。
あの戦争中に、日本人と中国人が友情を重ねる、という話は、なかなか難しいのだろうか。
戦争における人間の感情というテーマも、この映画の隠された主題だ。

東京国際映画祭や台北映画祭などに出品され、5月17日から東京などでも上映される。

ちょっと残念だったのが、上映時間が144分と長いこと。
抽象的な話でもあり、もう少しダイエットしてもよかったのでは。

公式サイト
黒四角公式サイト

ブログの最近の中国映画の記事
「最後の晩餐は泣かせ過ぎの映画」

© 2024 Nojima Tsuyoshi