2014/05/04

台湾映画

台湾映画「KANO」を観た。長春路の映画館で観たのだが、観客は10人ほど。
台湾でそろそろ上映が終わりかけていた。間に合ってよかった。

KANO予告編(ほんんど日本語なのでぜひみてください)
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この映画でいちばん関心したのは、プロデューサーを務めた魏徳聖の腕が、格段に上がっている、ということだろう。もちろん監督は馬志翔という新人監督なのだが、映画全体に魏徳聖のこだわりはふんだんにちりばめられている。
しかしながら、前作の「セデック・バレ」、
前々作の「海角七号」に比べて、
エンターテイメントとしての完成度がはるかに高い。
映画の上映時間が3時間ということで、観る前はちょっと長過ぎるのではと懸念していた。
しかし、あっという間に時間が過ぎて、その懸念は杞憂だったことが分かった。

「KANO」とは、嘉義農林の略語「嘉農」の日本語の発音。
映画はほとんど3分の2ぐらいが日本語。まるで日本映画を観ている錯覚に陥った。
俳優も、永瀬正敏、大沢たかおなど、日本の俳優が主要のキャストを占めている。

南部・嘉義にある嘉義農林という高校の弱小高校チームが、
近藤という日本人監督の厳しい指導のもと、
台湾予選を勝ち抜いて甲子園に出場しただけではなく、
初出場の甲子園であれよあれよと勝ち抜き、決勝まで進んだ実話にもとづく映画だ。

映画の見どころの一つは、当時の日本統治下の台湾において、
日本人、漢人、高砂族の三民族が、一致団結して戦うところだろう。
この点について、噛み付いてきたのは中国時報系の中国寄りのメディアで、
植民地統治を肯定するものだという批判があがった。
ただ、こうした批判は必ずしも台湾社会で広がりを得ることはなかったのは、
一つには実態として日本の統治を過剰かつ政治的に肯定するようなニュアンスは巧みにさけられていたのと、
もう一つ、これまで、魏徳聖に作ってきた作品からみれば、
「セデック・バレ」が高砂族が日本人をたくさん殺していく(日本人も高砂族を殺しているが)映画で、中国大陸で上映されて大ヒットになるなど「反日映画」と受け止められてもおかしくなかったので、作品傾向の政治的偏りを批判するロジックが成立しにくかったことも大きい。

映画としては、ゼロから初めて努力と根性と夢の力で強くなるという、スポーツ映画の王道を行っている。
監督の立場からすれば、近藤監督は日本を追い出されたという設定なので、「フィールドオブドリーム」であるし、選手の立場からすれば、白人と黒人が手を結んでフットボールで戦った「タイタンズを忘れない」になるだろうか。
映画の後半は、涙が流れっぱなしだった。特に台湾人の若者たちの演技がさわやかだ。
日本において毎年流される甲子園の感動物語は、いささか過剰なストーリー作りを感じるが、
このKANOについては、こんな物語が過去にあったことへの驚きとともに、
素直に感動できる良質のスポーツ映画として高く評価したい。

ちなみに、台湾での興行収入はおよそ3億台湾ドル(約10億円)だった。
これでも大ヒットなのだが、学生運動の時期と重なって若者が映画館に行かなかったので、
予想よりもかなり低かったという。
制作費も高かったので、このままでは赤字で、海外版権などを期待しているという。
日本での上映は甲子園のシーズンの今年夏を目指していたが、結局来年正月になったという。
少し残念だが、日本での反響がどのようなものになるか、楽しみにしていたい。

© 2021 Nojima Tsuyoshi