2014/11/01

台湾映画

「痞子英雄:黎明再起」

予告編

 人気ドラマシリーズ「痞子英雄(ブラック・アンド・ホワイト)」の二作目。一作目の「首部曲:全面開戰(ハーバークライシス)」よりも出来がいいことに驚いた。国際犯罪組織に決死の戦いを挑んで、超現実的な活躍によって事態を打開していくストーリーは同じだが、特撮など組み合わせた映像のレベルが、前作ではいささか問題があったのだが、本作ではかなり高いレベルに達していたことが大きい。
 加えて良かったのは、大陸の俳優・ 林更新の起用である。「痞子英雄」のタイトルにあるように、この作品は、悪たれを意味する「痞子」と、生真面目ながんばり屋さんの「英雄」のコンビが、お互いに悪態をつきながら、巧みな掛け合いによって、視聴者(観客)を楽しませていくところにあった。さらに、テレビドラマでは、陳意涵と張鈞甯という台湾でもトップレベルの二大女優が脇を固めていたので、だれるシーンがほとんどなく、ドラマとしては大変見事な出来ばえで、毎週の放送時間になると仕事を放っておいてテレビに釘付けになったものだった。
 しかし、一作目ではドラマで「痞子」を演じたF4の周渝民が、性格俳優の黄勃に変わってしまってていた。黄勃は大変いい俳優なのだが、スマートでいい加減な「痞子」のイメージとかけ離れすぎていて、最後まで違和感が抜けなかった。

これは、監督の蔡岳勲サイドと周渝民との間に感情的なあつれきがあったことも関係しているようだ。加えて、陳意涵と張鈞甯の二人がともにキャストから外れてしまい、アンジェラ・ベイビーという香港の人気女優の演技や位置づけいまいちだったことで、全体の作品のイメージが壊れてしまったのである。珍しく日本ではロードショーに入ったのだが、興行成績が良くなかったのは素直に作品のクオリティが低かったからと理解すべきだろう。

 しかし、本作については、林更新が「痞子」の役柄にぴったりはまったうえに、張鈞甯が鑑識官として戻ってきてくれたおかげで、映画の役者陣のバランスがとても良くなり、再登場の黄勃も、本来の人のいいヤクザという役柄を自然にこなすことができたので、作品としてのまとまりは、前作をかなり上回るようになっている。

 ただ、やはり苦言を呈したいのは、「悪の国際組織」のいかにも貧相なところで、迫力があまりになさすぎる。変な外人が混じって銃を撃ちまくるのはいいのだが、もう少し「悪のリアリティ」を追求してほしいものだ。

破壊工作によって、橋を壊したり、飛行機を落としたりしながら、台湾南部の高雄がモデルある「港湾都市」を大混乱に陥れていく様子は、よくここまで頑張って大掛かりな設定を整えたものだと、素直に拍手を送りたくなった。「踊る大捜査線」があくまで警察の論理や一般社会にもあり得る事件のリアリティを追求して成功したのに比べて、本作は限りなくダイハードやミッションインポッシブルの世界に近づこうとしており、その意欲は買いたい。しかし、そのためにはまだまだ超えなければならないハードルが高いことも教えてくれる作品である。

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