2017/07/10

台湾映画

山積みになった原稿の締め切りを前に、現実逃避っぽく、台湾映画の紹介を一つ。
ひさしぶりに「すごい」とうなる台湾映画をみた。電話番を意味する「接線員」という作品だ。

予告編はこちら。

 舞台はロンドン。台湾出身の女子大生は優秀な大学院を卒業したのに、折悪しく金融危機に遭遇して、ぜんぜん仕事が見つからない。たまたま声をかけられた仕事が電話番だった。しかし、普通の電話番ではない。売春窟の電話番なのである。
 実家からの仕送りも途絶え、一時的な糊口しのぎために始めた。同棲中の英国人の彼氏には黙っていた。一刻も早くそんな仕事からは抜け出したい。しかし、いろいろな不運に見舞われ、その売春窟で働く女たちのトラブルに、巻き込まれていく。
 電話番の女子大生を演じるのは「南風」で主役を演じたテレサ・チー。真剣だけれどもどこかユーモアをたたえたキャラがぴったりはまっている。売春婦を演じる女優たちもどれも光った演技を見せた。特に、台湾きっての演技派女優の陳湘琪はさすがの貫禄と深みのある表現を見せてくれた。
 この映画、いわゆるシチュエーションドラマに近いものだ。民家を使った売春窟を舞台に、登場人物の背景の描き方が丁寧で、脚本もしっかり練りこんでいるので、最後までまったく飽きさせない。余韻のあるエンディングもいい。
 「目撃者」に並ぶ今年の台湾映画のおすすめである。すでに台湾でも上映は終わっているようだけれど、日本に早く来て欲しい。台湾映画、いい作品はちゃんと出ている。この作品もそうだけど、若手の監督にどんどん撮って欲しい。
 中国と合作で一緒に作った作品は、「健忘村」もそうだし、最近の香港映画でもそうだだけど、なんか面白くなくなる。台湾の監督は、台湾の観客のために撮るべきで、それがたまたま大陸でも日本でも受けるときは受ける。狙ったらだめ。

© 2024 Nojima Tsuyoshi