【台湾環島day9(最終日):苗栗〜台中95キロ】

 最終日は、天候にも恵まれ、午前中はとても快適に走れた。ところが午後に走った路線で猛烈な横風を受けてしまい、転倒しかける人が続出してびっくりした。何事も最後まで心を緩めてはいけない。
 台中・大甲にあるジャイアントの本社を訪問し、完走証とメダルを、トニー・ローさんから受け取った。そのあと台中市内まで走り、我々台湾チームの「追風騎士団」に加えて、中国大陸のチーム、日本自治体からの参加者チームの3チーム合同で完走祝賀イベントがあった。

 走っている間に環島とは何かを考えようと思ったが、走っているときは、どうやったら疲れないで走れるかとか、あと何キロかとか、そんなことばっかり考えていたので、頭の中はからっぽ。昨年、環島のためのフォルモサ900というイベントに参加しながら、授賞式出席のため半分で帰国した中途半端さを解消できたのが嬉しい。
 台湾での自転車環島については「騎遇 福爾摩沙」という言葉がある。「走ることで台湾(フォルモサ)に出会う」という意味だ。まさに、環島とはそういう体験だろう。途中の道のりで何百人に「加油」と声をかけてもらっただろうか。景色の多様さ、美しさに何度もため息が出ただろうか。自分が取材・執筆の対象としていながら、台北で政治や文化の話を聞いていて、なんとなく知った気になっていたが、まだまだ見えていない台湾があることかよくわかった。50歳になる直前に環島を実行できてよかったと思う。

 環島が台湾社会にとって「認識台湾」のための通過儀礼になっていることに気づいたのはちょうど10年前の2007年。映画「練習曲」を見たことがきっかけだった。その映画の中の名台詞「有些事現在不做,一輩子不會做了(いまやっておかなければ、一生できないことがある」を改めて思い出して、8泊9日の環島を締めくくった。
 写真に入れたグローブは、環島中、毎日ずっと手にはめ続けたもの。すっかり使い潰してしまったが、完走証と一緒に捨てないで記念にとっておきたい。

© 2024 Nojima Tsuyoshi