2018/05/28

その他

ピースボート は、横浜から神戸、台湾の基隆、シンガポールを経ていまマラッカ海峡をスリランカに向かっています。マラッカ海峡ではさすがらにすれ違う船も多く、しかも距離が近い。マレーシア、インドネシアの両岸も見える。考えてみれば、シンガポール特派員時代からたくさんマラッカ海峡の記事を書いてきましたが、こんな風に船上から通過するのは初めてです。

さて、船内では、水先案内人という名前の講師役で乗船しているのですが、一日に1−2本の講演をやらなくてはなりません。これまで「台湾の脱原発・同性婚・外国人問題」「台湾の食文化」「記者はなぜ戦場にいくのか」「記者が教える文章講座」「シンガポールを深く知ろう」「台湾で環島がなぜ流行するのか」などなど、自分のキャリアで積み重ねてきたテーマを出し尽くすような日々です。講演やその他乗客の皆さんの自主企画が語学クラスなどのピースボート取材講座などをあわせると一日に何十個ものアクティビティがあり、その内容は、前日夜に配布される「船内新聞」によって告知されて、乗客はその情報をもとにいろいろな講座を選んで出席するのです。

 

講演その準備なども含めるとけっこう毎日バタバタしていて、どうも当初想定していたような半日ぐらいはゆっくり読書をしたり、考えたりという生活とはかなり違った日常になっています。水先案内人はもちろん私だけではなく、ジャーナリストの下村健一さんやアニメ監督の宇井孝司さんなど、毎日いろいろな内容の講座を持っています。

そうした内容は、ピースボート事務局が発行する船内新聞に掲載されて、翌日の行事一覧がびっしりと書き込まれて告知されて、乗客は自分の行きたい講座やクラスを選んでいるのです。いってみれば巨大カルチャースクールようなもので、皆さん、朝から晩まで、いろいろな行事をはしごして楽しんでます。

そうなると、こちらも毎回頑張ってしゃべらないと、次回からは来なくなってしまうので、結構なプレッシャーです。幸いなことに、参加者はいつも300人〜400人ぐらいでほぼ大ホールが満員になっている状態が続いており、船内を歩いていると、次々と「先生、先生」と声をかけてもらいます。嬉しい悩みではあるのですが、船という空間にいると、時間も場所もたっぷりあるせいか、講演で気になったところについて教えて欲しいとか、こういう問題はどうだろうか、といった質問をどんどんされて、普通の講演などだとだいたい立ち話でバタバタしているので短いやり取りに終わってしまうのですが、ここではじっくり一人につき10分や20分は話こむことも珍しくありません。

こういう一対一の質疑応答も一日に10人ぐらいはあるので、一日はあっという間にすぎていく感じです。しかし、本来、教養をつくっていく世界のなかの対話というのは本来こうあるべきでだと思うようになりました。乗船してる人の7割は退職した高齢者の方々なので、いろいろな見識の持ち主も多く、私のほうも話を聞いていると、逆に啓蒙されるところが多々あります。

© 2024 Nojima Tsuyoshi