2018/06/13

その他

クルーズ船に乗っていると、途中で降りる機会がある。それが寄港だ。今回でいえば、日本の横浜・神戸で大変の乗客を載せたピースボート は、台湾の基隆、シンガポール、そして「水先案内人」という講師としての乗船が終了するスリランカのコロンボでそれぞれ寄港した。今回は、シンガポールの寄稿について報告したい。

といっても、私にたくさんの時間があるわけではない。朝に到着したあと、午後には知り合いとのミーティングを二つ入れており、朝食と昼食の二回しか食事の機会がない。朝到着後に船から離れると、夕方の9時ぐらいには船に戻ってこないとならない。深夜の出港が多いが、出港時間に間に合わないと、そのまま置いていかれてしまう。知らない土地であれば、旅行も丁寧にプランしないと、制限時間前に港に戻ってこれなくなってしまう。

私はかつてシンガポールに暮らしていた。国際都市なので、日本食も西洋料理も何を食べても美味しいけれど、やはり外国にきた以上は、そこでしか食べられないものを食べたい。まず向かった先は「肉骨茶」を食べる店だ。

肉骨茶といえば、日本人は怖いと感じるかもしれない。何しろ「肉骨」に「茶」なのだから。しかし、「茶」という言葉は、中国語では「スープ」を意味する場合もある。茶葉が入っていなくても、茶と呼ぶのである。

シンガポールで向かった先は「亜華肉骨茶」だ。かつて働いていた朝日新聞シンガポール支局のあるタンジョパガール地区にある。この地区は、シンガポール港湾施設の近くあり、数万人の港湾労働者が通っているところだ。庶民的なお店がたくさんある。そのなかでも「亜華肉骨茶」は老舗中の老舗。しかも港湾の入り口の真横にあることから、お昼時になると、港湾で働く人たちでごった返すことがわかっている。それなので、私は早朝港に到着してから、船を降りたら、真っ先に向かった。到着したのは10時。ちょうど朝食と昼食の間ということもあり、お客さんはほとんどいないのでゆっくり食べられた。

胡椒が効いたバクテーのスープは一度食べたらやみつきになる。メーンの豚肉は「肥」と「痩」のどちらかを選ぶ。といっても、肉自体が痩せているというわけではなく、脂身がある場所が、そうでない場所か、という違いである。どちらを頼んでも、トロトロになるまで煮込んだ骨つき豚肉の柔らかさに驚かされる。シンガポールの大衆の食事場所は基本は吹き抜けの半屋外。外気の暑さとスープの熱で汗をかきながら、ご飯と一緒に肉や付け合わせの野菜を食べ進める。

この店で好きなのは、スープやにんにくをおかわりできること。スープは今回、3回おかわりした。にんにくは2回。大量の骨つき豚肉とにんにくのだしが聞いているスープは奇跡的なほどに美味しい。にんにくも口に入れると溶け出すほど柔らかい。飲み物は、体の温度を下げる効果がある「薏米水(はと麦茶)」を注文した。

これだけで、十分に満足いくシンガポールの寄港である。

 

© 2024 Nojima Tsuyoshi