2026/08/06

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【夏の本棚】村上春樹『夏帆』新潮社

最初の出だしが引き込まれる会話で、その内容から「お、この本はルッキズム批判が主題かもしれない」と思ったが、やっぱり全然そんなことはなく、村上春樹は村上春樹だなという読後感。重厚さからいえば、彼の作品のなかでは上の下か中の上ぐらいだろうか、それでもあっという間に読み終わった。刊行されたばかりなのでネタバレは控えたいが、現実と異世界の境界があいまいになって暴力やセックスがストーリーに入ってきて、人格をもった動物とかいろいろ出てくるとは村上世界だが、家族がテーマである点は過去にはなかった。夏帆という主人公のキャラクターはけっこう気に入った。ハルキストではないが彼の作品とともに歩んだ世代という自覚はある。16冊目の長編小説と帯にあったが、全部たぶん読んだ。久々の村上読書は、あまり重さを感じさせないけど、ぐさっと芯をつくような文体にちょっとは影響を受けていると自分の文章の根底にあるものがわかったような気もした。あと人生、何冊ぐらい村上春樹の本を読めるだろうか。

© 2026 Nojima Tsuyoshi