2026/08/09

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【夏の本棚】
平野久美子『香港食べもの史ー伝説のおかずから現代の監獄飯まで 』(中央公論新社)

平野久美子さんの名著『食べ物が語る香港史』を改題し、大幅に加筆した本書が刊行された。前著を手に香港の名店を訪れた日々を思い起こす。香港の魅力の一つは、間違いなく食によって形成されている。移民にとっては「食」は人生そのもの。自由気ままな香港人も食にだけは忠誠を誓っている。その食を切り口に、その背後にある人々の生活、歴史、思想、社会そのものを描きだそうという内容で、新著では、昨今の香港で起きたことをアップデートし、一層に充実させた内容になっている。ジミー・ライの逮捕に関係する「監獄飯」のところ、国安法で逮捕された女性が出獄後に最初に食べたかったものがドンキのお菓子であったことなど、今の香港の空気も本のなかにたっぷり込められている。個人的に香港には6年も渡っていない。私のような人はふつーに入れると思うけれど、取材もできないし、なんとなく行かないまま時間がすぎてしまっていた。この本を読んでいたら、鏞記のガチョウ飯とか池記の雲呑麺が食べたくて仕方なくなった。映画『トワイライト・ウォリアーズ』に出てきた九龍城のチャーシュー飯に平野さんも反応しているところなどは読みながらくすくす。今年の後半には香港に関する書き物を2本書かないとならないこともある。仕上げたらご褒美に年末年始あたりの上海蟹シーズンに一度行ってみようかと思う。

© 2026 Nojima Tsuyoshi