2026/08/12

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【夏の本棚】
諸永裕司『灰色の鎖 PFAS汚染列島』文藝春秋

諸永氏は朝日のほぼ同期で、在職中は会社の外でせっせと本を書いていた「仲間」の一人で、三年前に退社してフリーになって最初に世に問うた渾身の作品。組織を離れた決意を胸に傑作をものにしたんだなと読み終わって嬉しい気持ちになった。
もともとPFASについては知識も乏しく、逆に先入観もなくて読み始めたが、猛暑なのに、読んでいてうすら寒くなった。アカデミズムと中央官庁が結びついて、国民の生命や安全とは別のスタンダードでこの問題を処理しようとしていることがわかったからだ。一部(といっても結構な数の)研究者の卑劣な姿を学界内の人間関係を含めてしつこく描いているところがいちばん読み応えがあった。本書が問いかけるのは「科学の信頼」ではなく「科学に携わる人々の信頼」である。科学が導くファクトに忠実に行政や研究者は行動しているのか。PFASの安全基準を定めるなかで、先送り的な結論を出した科学者たちの姿に非常に不安を感じた。
メディア出身のライターは感情を文章をあまり出さないように教育されてきた。諸永氏の文章も体温でいえば暑くもなく寒くもなく、平温でずっと淡々と描かれているが、並べられるファクトが怒りを孕んでいることが滲ませている。いまのインフルエンサーの一人勝ちのようなご時世には明らかに時代遅れなのだが、ジャーナリズムの仕事は粛々とファクトで勝負するしかない。

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